BaD
時は流れ、僕は大人になった。

あの日のことは、もう思い出したくもない。

いつも夢に出る、子供時代の友達だったえっちゃんが僕に助けを求め、そしてあの時の悲劇が起こる。


一瞬だった……。


気づけばえっちゃんの首は僕の頬をかすり背後へと飛んで行き、体はそれが今までどこにあったのかすら分からぬほどバラバラになり、真っ赤な血に染まった刃物が、何枚も宙を回転しながら飛び交い、まだ足りないとばかりに僕を狙う。

それからどうなったのかは分からない。

ただ、えっちゃんという存在はこの世には存在しなっかたモノとなっているらしい。

僕の話をまともに受け取った人はおらず、少しの間病院に入れられた。


本当に僕が病気だったのか、いや、むしろその方がいい。

そんなことがあっていい
はずがないのだ。

今は妻や子供がいて、とても幸せだ。

だからこんな話、妻や子供にはしない。

僕は病気だったのだ、夢を見ただけなのだ。

だからえっちゃんは存在しない架空の人物で、近所にあったはずのおばあさんの家も存在しなかった。

もう二度と、こんな恐ろしいことを考えるのはよそう。



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