BaD

「聞いてるよ、ばあちゃん死んでしまったんだって…。」


少しだけ、ほんの少しだけ、あのおばあさんとは話したことがあった。

話した、と言うより庭に入ったボールを取ってもいいかどうか確認しただけだ。

そのときのおばあさんの優しそうな笑顔が甦る。

「そうよ、気になるじゃない。あのおばあさん、この前まで元気だったっていうのに…。」


まったくもってその通りだ、一人暮らしのおばあさんの家の庭はいつも綺麗で、手入れが行き届いていた。

きっと庭のお花を育てるのが楽しみだったのだろう。

僕もボールを拾いに行った時、真っ赤な綺麗なお花をおばあさんは嬉しそうにプレゼントしてくれた。

その笑顔からは、とても急に死んでしまうよぉには見えなかった。

でも問題はそんなことじゃなく、死に方だった。

皮膚や爪をはがれ、目玉はくり剥かれ、手足はあらぬ方向を向き、なぜか口元は微笑んでいて…。

とにかく気持ちの悪い死に方をしていたらしいのだ。
そして周りにはなぜか焼かれたおもちゃが並べられていたらしい。


「そうだけど、行ってどうするの?」


子供の僕からしてみれば、そんな恐ろしい場所には行きたくないものだ。

それをどうして彼女は行きたがるのかが余程気になった。

しかしその答えはなんとなく気付いてはいた。

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