September〜世界で一番綺麗なもの〜
月に浮かんだ模様がくっきりと見える。日本では餅をついたウサギだが、世界ではカニやワニなど様々な見え方があるらしい。そんな雑学をふと未来は思い出した。

「長月さん。月が綺麗ですね」

悠二がその場に立ち止まって言った。真剣な顔で未来を見つめている。月が綺麗だという話はさっきしなかったっけと未来は一瞬思ったが、あることを思い出した。

悠二に恋をした日に、夏目漱石が好きな先生はこう話していた。今まで朧げだった記憶がその瞬間はっきりと蘇る。

『夏目漱石は英語の先生をしていた時、生徒のI love youの「我、君を愛す」という訳し方に「日本人はそんな直球に愛を伝えない」と言いました。そして漱石はこう訳すように言ったのです』

夏目漱石の訳したI love youは「月が綺麗ですね」だ。未来の胸が高鳴っていく。嬉しさから涙が溢れていった。返事をしようと口を開く。

「ずっと前から、月は綺麗でした」

未来と悠二は月明かりの下、赤い顔をしながら見つめ合った。
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