青い便箋
3月吉日 横崎学院高等学校 卒業式
麗らかな晴天の下、道の両脇に植わる白い沈丁花と紫の蔓日々草が、校門へと導く道標のように、風の流れに添ってそよぎ、そっと拍手を贈るように小さく揺れている。
学校敷地内にある桜のつぼみはまだ堅く、赤みの濃い梅の花が、桜の代わりに校舎を華やかに彩る。
無事式を終えた卒業生達は、玄関前のアプローチいっぱいに集まり、友やお世話になった先輩との別れを惜しむ者達で溢れかえっていた。
高杉先輩は玄関前と校門のちょうど真ん中辺りで、たくさんの仲間や後輩に取り囲まれ、仲間同士でふざけたり、胴上げをしあったり、後輩から物をねだられたり、学校中の人気者である高杉先輩に声をかける者は後を絶たない。
1年生の大橋遥香は、同じクラスになった仲良しグループである紀子、美穂、祐子の3人の力を借り、最初で最後の【先輩と会話&プレゼントを渡す大作戦】を決行すべく、その輪の外側に位置取り、今まさに、タイミングを見計らっていた。
「先輩一人になるタイミング、なかなか難しそうじゃない?」
高杉先輩がいる大きな輪を、背伸びして様子を伺う美穂。
「そうねぇ…この人集り引けるの、時間かかりそうだよね。ねぇ、遥香。あの中に入って、先輩呼び出すしかなくない?どう転んでも目立ちそうだし、みんなの前でやる覚悟で行くしかないよ」
紀子は軽々しくハードルの高いことを言う。
「えー!こ、心の準備が追いつかない…別に告るわけじゃないけど、人目のないところじゃないと話せないよ…」
心の準備なんて、どんなに時間をかけても完了しない。呼び出す勇気があったなら、今すぐでもズカズカあの輪に踏み込んで行ってるし…遥香は、心の中で紀子へ突っ込みながらも、例え先輩がぽつんと一人でいたとしても、声をかけられない自信しかない。ウジウジと友を3人も付き合わせておいて、未だ、恥ずかしさを全く拭えず、ここにいるのだ。
「人目のないとこなんかなくない?」
祐子は正しい。
それでも遥香なりに、何とか勇気を出して、高杉先輩の輪に何度も近づこうとするも、次々に他の生徒達が先輩を取り巻き、近づこうにも近づけない。ただ遠巻きに見ながら一歩前に出たり後退したりを繰り返していた。
麗らかな晴天の下、道の両脇に植わる白い沈丁花と紫の蔓日々草が、校門へと導く道標のように、風の流れに添ってそよぎ、そっと拍手を贈るように小さく揺れている。
学校敷地内にある桜のつぼみはまだ堅く、赤みの濃い梅の花が、桜の代わりに校舎を華やかに彩る。
無事式を終えた卒業生達は、玄関前のアプローチいっぱいに集まり、友やお世話になった先輩との別れを惜しむ者達で溢れかえっていた。
高杉先輩は玄関前と校門のちょうど真ん中辺りで、たくさんの仲間や後輩に取り囲まれ、仲間同士でふざけたり、胴上げをしあったり、後輩から物をねだられたり、学校中の人気者である高杉先輩に声をかける者は後を絶たない。
1年生の大橋遥香は、同じクラスになった仲良しグループである紀子、美穂、祐子の3人の力を借り、最初で最後の【先輩と会話&プレゼントを渡す大作戦】を決行すべく、その輪の外側に位置取り、今まさに、タイミングを見計らっていた。
「先輩一人になるタイミング、なかなか難しそうじゃない?」
高杉先輩がいる大きな輪を、背伸びして様子を伺う美穂。
「そうねぇ…この人集り引けるの、時間かかりそうだよね。ねぇ、遥香。あの中に入って、先輩呼び出すしかなくない?どう転んでも目立ちそうだし、みんなの前でやる覚悟で行くしかないよ」
紀子は軽々しくハードルの高いことを言う。
「えー!こ、心の準備が追いつかない…別に告るわけじゃないけど、人目のないところじゃないと話せないよ…」
心の準備なんて、どんなに時間をかけても完了しない。呼び出す勇気があったなら、今すぐでもズカズカあの輪に踏み込んで行ってるし…遥香は、心の中で紀子へ突っ込みながらも、例え先輩がぽつんと一人でいたとしても、声をかけられない自信しかない。ウジウジと友を3人も付き合わせておいて、未だ、恥ずかしさを全く拭えず、ここにいるのだ。
「人目のないとこなんかなくない?」
祐子は正しい。
それでも遥香なりに、何とか勇気を出して、高杉先輩の輪に何度も近づこうとするも、次々に他の生徒達が先輩を取り巻き、近づこうにも近づけない。ただ遠巻きに見ながら一歩前に出たり後退したりを繰り返していた。
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