裏社会の私と表社会の貴方との境界線

重大任務の始動

プロローグ〜私の日常〜

「現在20時ちょうど。ミッションを開始します」


屋敷の頂上の壁についている鐘が鳴ると同時に銃の発砲音が聞こえ始める。


パンッ！


それと同時に、屋敷の廊下からバタバタと聞こえるいくつもの足音。


「ボス！侵入者です！！」


そう言いながら、ひとりの男がボス部屋の扉を開ける。


「何！？相手はどこの組織だ？！」


「それが…単独だそうなのですが、雨晴華恋だと…」


「は？！雨晴なんていう大グループが侵入してきたのか！！…とにかく！一刻も早く逃げるぞ！！」


ボスと呼ばれた男は、もうひとりの男を連れて急いで屋敷の階段を下っていき外へ出る。


「ですが相手は1人ですよ？！」


「お前はバカか！！雨晴は失敗を犯したことはないし、それに雨晴華恋はマフィア最強の女だぞ！？私たち如きが勝てるわけ…」


ボスの後ろを走っている男が、不意に横を見る。


そこには金髪の女が嬉しそうに不気味に笑い、銃口をこちらに向けた。


パンっ！


プルル…プルル。


女のスマホが鳴っている。


そのスマホの画面にはお父様と表示されていて、銃を片手に女は父と通話を始めた。


「任務完了ですお父様」


「ああ。よくやった。戻ってこい」


「はい。承知(しょうち)しました」


ポツポツと雨が降り出し、私は灰色に染まる空を見上げた。


この時私はまだ、深い深い闇に染まっていた。