裏社会の私と表社会の貴方との境界線

約束を交わす

「——と、いうことなの。この作戦でいいかしら?」


次の日、私は計画の参加者全員を集めて作戦を伝えた。


みんな少し考えた後、ゆっくりと頷いた。


「いいみたいね。それじゃあ、この作戦で行くから当日はよろしくね」


そうして作戦会議を終えたのだった。


決行の日は2日後。


私もいろいろと準備をしないとね。


「雨晴」


「…真白?」


いつにもなく真剣な声色で私の名前を呼んだ真白。


いったいなに?


「どうしたの?」


なんだか避けられるようなことが増えていたから、不審に思いながらも私は冷静装って言った。


「計画とは関係ないんだけどさ、少し話でもしない?」


「…なんでこのタイミングで?」


私がそう聞くと、真白は微笑んだ。


まるで誤魔化すかのように。


「ただ話をしなくちゃって思っただけ。あ、そうだ。せっかくだからカフェテリアの温室のテーブルでお茶でもしようよ。雨晴は紅茶が好きでしょ?」


真白がそういうならいいか。


そう思って、私は頷いた。


***


私達は席について、紅茶をひと口飲んだ。


「雨晴はよくアールグレイをよく飲むよね。好きなの?」


「ええ、まあ。といっても、姉が好きだった影響だけどね」


そう言うと、少しだけ悲しそうな表情をした真白。


きっとあの話を聞いて、思うところがあったのだろう。


私は大好きだった姉と再会したものの、姉は変わり果てていた。


上品でまさに公爵家の跡取りとして相応しいかったはずのレンカお姉様は、病弱で感情の欠けた反対の琉愛になってしまったのだから。


「雨晴はこの戦い、勝てると思う?」


「…さあ、わからないわ。でも、たとえ死ぬことになっても私は戦わなくちゃいけないの。真白も同じ気持ちでしょう?」


「そう…だね」


勝てる、勝てないなんて考えない。


ただひたすらに戦うのが、今回の人生だから。


最後まで全力で生きたいって思うの。


「ねえ、雨晴」


「なに?」


私が顔を上げると、真白の真剣な瞳と視線が合った。


「好きだよ。俺は華恋のことがどうしようもなく好きなんだ。だから、死ぬなんて考えないでね。ちゃんと生きて、この戦いを勝利で終わらせよう」


真白には決意という文字が宿っていた。


強い、真白は本当に強い。


私なんか不釣り合い。


でも、真白にそう言ってもらえるなら——。


「わかったわ。約束するから、真白もちゃんと生きて私の隣にいてちょうだい。死んだら許さないから」


真白に惹かれている。


自分でも薄々気がついていた。


だから、大好きな人には死んでほしくない。


自分を犠牲にしてでも。


そう思ってしまうのは、きっとよくないことだけど仕方がないの。


「うん、ありがとう。華恋とまたここで紅茶をゆっくり飲みたいからさ」


「くすっ、何よそれ。まったく、斗亜はよくわからないことをいうわね」


「っ…!今……」


真白が“華恋”というものだから、私だって名前で呼んでもいいでしょう?


好きな人に名前を呼ばれるのって特別な気分。


でもね、この戦争が終わるまでは貴方に思いは伝えられない。


まだ私達には裏社会の華恋と、表社会の乃亜という境界線があるのだから。


「今は斗亜って呼ぶわ。乃亜とは呼ばないわよ」


それでも、貴方は優しく笑ってくれたの。


タイムリミットが近づく。


わかっていた。


——私の命は絶対に18歳まではもたないと。
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