人気バンドの紅一点?!~天然美女は溺愛される~
「あ・・・ごめんネイ。えっと、一緒に考える・・・?」
気遣うようにコウが笑みを浮かべる。
「・・・」
無言のネイにセイが苦笑し、コウと顔を見合わせる。
「ネイネイ、一緒に曲作りたい・・・」
ネイのゆる~い服の裾をぎゅっと握ってお願いすると、ネイはチラリとこちらを見て少し嬉しそうにはにかんだ。
「でもなんもわからないし・・・」
拗ねてる演技を続けようとしているのか、ネイな不安そうに言う。
「大丈夫!1から全部作ってアイデア提供しろとか言わないから!私ができるだけ候補出すから、どれがいいか一緒に決めよ?」
「っ・・・やりたい」
「やた!いつか一緒にやってみたかったんだよね」
夢がまた一つ叶う。
ARTEMISを結成したとき、私たちは夢をいくつか書きだした。
『あの歌番組に出たい』『あの番組のスポットライトを当てられたい』『アリーナでライブしたい』とかの大きめなもの。
『青春な曲をやりたい』『仲良しって一瞬で理解できるグループになりない』とか小さめなもの。
メンバー同士で見せ合わず、お互いの夢を自然な形で叶えたいね、とコウが言ったのが始まりだ。
私は『ネイと作曲してみたい』と書いていた。
ネイは作曲の専門的なコトは分からないだろうけど、すごくセンスがあると思うんだよね。
「ネイがユキと作曲するのか・・・。じゃあセイは僕と作詞する?」
「じゃあ4人で作詞作曲でいいんじゃない?」
セイがまとめ、最高の形で曲作りに挑める態勢を作る。

ネイが一応リーダーなんだけど、ネイはどちらかというと私と同い年くらいの弟キャラ。
元気だけど真面目な、みんなに愛される可愛カッコいい弟ちゃんだ。
だから、グループ内では最年長タイプなセイがリーダーの役目を請け負うコトもあるんだ。
でもセイは『前に出であからさまに引っ張っていくのはARTEMISっぽくない。みんなで同時に進みたい』らしく、リーダーはネイのままなんだよね。
それに前の吐き出し会でも言われてたけど、セイは前に出てなさすぎる。
引き立て役に徹する、舞台で言う黒子(くろこ)さんだ。
だから、ARTEMISの演奏を始めてみたときは、メンバーは私、コウ、ネイだと勘違いする人が多い。
サポートメンバーのベースと同じように見られちゃってるんだよね。
Blizzardさんも4人組だけど、ARTEMISはまだBlizzardさんほど知名度は高くないし。
Blizzardさんの4人組が珍しいのかな。
たしかにバンドは3人か5人、奇数メンバーなイメージかも。
3人の場合は、サポートメンバーがドラムとベースみたいな。
偏見だけど、たしかにその2役は後ろにいるからサポートメンバーだと思われやすいのかもしれない。
目立とうとしていないからなおさら。

「セイもちゃんと前出てよー?」
そういうと、セイの笑顔が一瞬固まる。
そして、すぐにいつもの兄貴顔に戻った。
「わーってるよ。太鼓首から下げてライブで走り回るんだろ?」
「・・・うん。セイもちゃんとARTEMISなんだから」
兄貴なのに控えめなセイは、人柄が広まったらグループで一番人気になるかもしれない。
それで全然いいから・・・セイにはもっと前に出てもらわないと。
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