乙女ゲームのヒロインに転生して王子様と将棋で戦ったら求婚されました 〜あなたも転生者でしょ!〜
ドキリとした。
さっきぶーたれていたとは思えないような、大人っぽい瞳で私を見つめるから。
「せ、世界平和がそんなに好きなのかしら」
焦って変なことを言ってしまった。彼は苦笑して首を振る。
「君には目標があったんだろう」
彼が言葉を続ける。
「夢があって、努力していた。職業にしようと思えるほどに」
有名棋士の対局集はボロボロになるまでその棋譜を並べた。将棋の書籍もたくさん買って何度も読んだ。詰将棋だってたくさん解いた。大会にもたくさん出場した。友達ともほとんど遊ばなかった。できる限りの時間を将棋に費やした。
――私は天才じゃない。
努力をやめたら落ちていくだけだ。
あなたなんかに分かるわけないという思いと、この世界ではこの人にしか分かってもらえないという思いがせめぎ合う。
「それなのに私という格下の相手に負けた」
心臓を抉られる。
「でも君は、何も言い訳をしなかった。苦しむ姿も見せずすぐに受け入れ、私を導こうとした。この世界ごと高みへと」
……せめて言葉でくらい上回ってやろうと思っただけだ。
「私にも夢があったんだ」
え?
「いつか一級建築士になって自分の事務所を持つんだと夢をもっていた。大学では建築学科に入った」
「……将棋は関係ないのね」
「そっちは趣味だ。ネット対戦したり将棋祭に行ったりタイトル戦を見に行く程度だ」
……ミーハーね。ネット対戦で鬼殺しにハメられたこともあったのかもしれない。だから対策を勉強して覚えていたのかも。
「じ、地元で指導対局が行われる時は行ったりもしたんだぞ」
にわか将棋オタねって顔をしていたかしら、私。
「そう。それなら建築士闘技場にすればよかったじゃない」
「どんなんだよ!」
「想像もつかないわ」
「私もだ。そこは価値感を共有できてよかったよ」
彼が掴んだままの私の両手を大事そうになでる。
「君に惚れたんだ。君のこれまでの努力が伝わってきた。それなのに、負けをすぐに受け入れられる強さも感じた。すぐに前を向けるその姿勢に憧れたんだ。君となら世界だって平和にできる。宇宙にだって進出できるって思ったんだ」
本当に暑苦しい男。好きでもない女のたった一言に、壮大な夢をみるなんて。
暑苦しすぎて……泣いてしまいそう。
さっきぶーたれていたとは思えないような、大人っぽい瞳で私を見つめるから。
「せ、世界平和がそんなに好きなのかしら」
焦って変なことを言ってしまった。彼は苦笑して首を振る。
「君には目標があったんだろう」
彼が言葉を続ける。
「夢があって、努力していた。職業にしようと思えるほどに」
有名棋士の対局集はボロボロになるまでその棋譜を並べた。将棋の書籍もたくさん買って何度も読んだ。詰将棋だってたくさん解いた。大会にもたくさん出場した。友達ともほとんど遊ばなかった。できる限りの時間を将棋に費やした。
――私は天才じゃない。
努力をやめたら落ちていくだけだ。
あなたなんかに分かるわけないという思いと、この世界ではこの人にしか分かってもらえないという思いがせめぎ合う。
「それなのに私という格下の相手に負けた」
心臓を抉られる。
「でも君は、何も言い訳をしなかった。苦しむ姿も見せずすぐに受け入れ、私を導こうとした。この世界ごと高みへと」
……せめて言葉でくらい上回ってやろうと思っただけだ。
「私にも夢があったんだ」
え?
「いつか一級建築士になって自分の事務所を持つんだと夢をもっていた。大学では建築学科に入った」
「……将棋は関係ないのね」
「そっちは趣味だ。ネット対戦したり将棋祭に行ったりタイトル戦を見に行く程度だ」
……ミーハーね。ネット対戦で鬼殺しにハメられたこともあったのかもしれない。だから対策を勉強して覚えていたのかも。
「じ、地元で指導対局が行われる時は行ったりもしたんだぞ」
にわか将棋オタねって顔をしていたかしら、私。
「そう。それなら建築士闘技場にすればよかったじゃない」
「どんなんだよ!」
「想像もつかないわ」
「私もだ。そこは価値感を共有できてよかったよ」
彼が掴んだままの私の両手を大事そうになでる。
「君に惚れたんだ。君のこれまでの努力が伝わってきた。それなのに、負けをすぐに受け入れられる強さも感じた。すぐに前を向けるその姿勢に憧れたんだ。君となら世界だって平和にできる。宇宙にだって進出できるって思ったんだ」
本当に暑苦しい男。好きでもない女のたった一言に、壮大な夢をみるなんて。
暑苦しすぎて……泣いてしまいそう。