離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
「いや、今日は先約があるから無理だ」
「は? お前に予定があんの?」
「ある」
「いやいや、ないだろ。美鈴ちゃんと約束でもしてないかぎり、お前に予定なんてあるわけない。仕事は別としてさ」

 自分で答えを言っていてなぜ気づかないのだろうか。こいつは鋭いくせに、どうにも思考が足りていないところがある。いつもあと一つ足りないところがあるなと思うが、それが手嶋の魅力なのだろう。

 千博は手嶋に正直に話すと面倒なことになりそうだとは思いつつも、嘘をつく意味もないからと今日の予定を伝える。

「美鈴と約束がある」
「えっ!? 美鈴ちゃんと約束してんのか!? 何の約束してるんだよ」

 思った通りの食いつきぶりに、千博は少しの鬱陶しさを覚えながらもありのままを答える。

「ただの映画だよ」
「映画? え、美鈴ちゃんと二人で映画に行くのか?」
「そうだよ」
「そうか、そうか。ようやく向き合い出したんだな」
「場所を考えろ」

 ニヤニヤとこちらを見てくる手嶋を千博はぎろりと睨む。この男はまた場所も考えずに危うい発言をしている。会社でそれ以上は言うなと眼光を鋭くし、目で訴えかける。

「悪い、悪い。ま、楽しんでこいよ」

 少しも悪いと思っているようには見えない手嶋の態度に、千博は小さくため息をこぼした。
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