離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
「あの……私のこと、いいと思ってくださって、ありがとうございます。はる先生のお気持ちには応えられませんが、これからも同僚として仲よくしていただけたら嬉しいです」
「もちろんです。こちらこそよろしくお願いします」

 歩きながら軽く会釈し合う二人。

 磯崎は数歩歩いてから、小さくため息をこぼす。

「はあ、僕はいつもこうなんです。間が悪いといいますか、恋愛で上手くいった試しがなくて……なぜかいつも締まらない形で想いを伝えることになるんですよね」

 磯崎らしいと納得する。自分のことよりも相手のことを思いやって行動するがゆえの結果だろう。

 自分が磯崎の相手になることはできないが、彼ならばきっと素敵な人と巡り会えるだろうと強く思う。

「はる先生らしいですね。きっと先生が誠実な方だからだと思いますよ」

 磯崎はそのままでいいのだという意味を込めてそう返した。


 そして、心の中でひそかに思った。

 千博とも、こんなふうに真っ直ぐに言葉をかけ合えたら、今の微妙な空気も変わるのだろうかと。
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