離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
 また一人になった千博は力なく椅子に座り込む。

 千博が放った言葉はすべて本心だが、美鈴を傷つけた張本人が何を言っているのだろうと己に呆れかえる。

 ふさわしいなどと言われて嫌悪感から反発したが、実際は似合いなのかもしれない。美鈴を偽りの愛で囲み、利用したのだ。汚い人間同士、似合いに違いない。むしろ清らかな美鈴に千博がふさわしくないのだ。

 千博はどの感情からきているのかわからないため息をこぼす。

 誰にも聞かれないからと随分と大きく吐き出したが、冷静になって状況を確認すると外がどうにも騒がしい。

 何事かと会議室を出てみれば、数人が千博に視線を集めたかと思うと、その全員が勢いよく視線を逸らし、すぐにその場を去っていった。

 その行動で理解する。先ほどの怒鳴り声を聞かれていたのだと。

 面倒なことになったと思うものの、本音を吐き出した千博はどこかすっきりとしていた。
< 199 / 216 >

この作品をシェア

pagetop