離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
 おそらくは時間にして三秒の短い口づけは、千博が顔を離したことで終わりを迎えた。

「美鈴? 平気か? 気持ち悪くはない? 怖くはなかったか?」
「ん、大丈夫。ドキドキしてるだけ」
「っ……まったく。僕の方が心臓がはち切れそうだよ」

 そのままくすくすと笑い合う。今確かに二人の心が通い合っているのだ感じる。美鈴はようやく千博との愛し合う関係を手に入れられたのだ。嬉しさで瞳にわずかに涙が滲む。

 まさか日本を発つ前にこんなに大きなプレゼントをもらえるとは夢にも思わなかった。

 そんな感想を抱いたところで、まだ大きな誤解を解いていなかったことに気づく。

 美鈴は千博に向かってにこりと微笑んだ。

「千博さん。三ヶ月、待っててね」
「……三ヶ月?」
「三ヶ月で語学留学から帰って来るから、それまでちゃんと私のこと待っててよ」
「……は!? 三ヶ月……そうか。そういうことか……なんだよ……」

 千博はその場に力なくへたり込む。そのまま肩を震わせながら、「君の友人も大概意地悪だな」とこぼす。

 そんな千博に、美鈴も笑いながら「頼りになる友人だから」と返した。
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