離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
 美鈴は離れがたく思いながらも己を奮い立たせ、千博とわずかの距離を取る。

「ごめん、大丈夫。少し変な夢を見て、ぼーっとしてたみたい」
「夢? どんな?」

 夢。夢にしてしまいたい。

『千博さんの私への愛が嘘だという夢を見たの』
『それは怖かったね。僕の君への愛は本物だから、何も心配いらないよ』

 そんな会話が脳内を流れるが、昨夜の出来事が夢でないことはわかっている。間違っても口にできるわけがない。

 夢と言ったのもただの出まかせだから、適当に誤魔化しの言葉で濁すほかなかった。

「……忘れちゃった」
「ははっ、そっか。まあ夢を見ただけならいいけど、無理はしないで」
「うん」
「今日は僕が朝食を作ろう。美鈴はゆっくり起きておいで」

 一人になった寝室で小さなため息をこぼす。あのときの千博と今の千博があまりにもかけ離れていて、不安ばかりが募ってしまう。言葉にできない思いをため息で吐き出して、鬱屈とした気持ちを追いやる以外、今の美鈴にできることはなかった。
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