離婚を前提にお付き合いしてください ～私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした～

　すぐに優しい口づけが降ってきた。そのまま彼の唇が全身を愛していく。

　千博の触れ方はいつも丁寧で優しいが、今日はそれに輪をかけて優しい。爪の一つ一つまで愛されていると感じられるほど、ゆっくりすべてに触れていってくれた。

　そうして高まりきった美鈴に千博が深く重なってくる。その瞬間、千博から吐息交じりの声がこぼれる。

「美鈴っ」

　眉間に寄せられたわずかな皺と少し上がった口角。そして、真っ直ぐにこちらを見つめる瞳。美鈴を求めるように名を呼んでくれるこの瞬間が好きでたまらない。美鈴も自然と呼び返す。

「千博、さんっ」

　深く交わりながらも、千博からの愛の言葉は止まらない。

「美鈴っ。好きだよ、美鈴。愛している」
「っ……千博さんっ」

　千博に求められ、愛の言葉を与えられ、美鈴の全身が喜びを覚える。嬉しくてしかたがないはずなのに、それでも美鈴の中の不安は消えてなくならない。

　愛の言葉を返すのがなぜか怖くてたまらなくて、ただただ千博の名を呼び続けることしかできなかった。