離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
 その話し相手である手嶋は、先ほどの千博以上に緊張した表情をしてこちらを見ている。

「え、いや終わったって。何を話したんだよ」

 何を話したかといえば、それなりにいろいろと話した気がするが、行きつく先はただ一つ。それが最も重要な内容だろうと過程は話さずに先にその結論だけを告げる。

「離婚する」
「っ……美鈴ちゃんがそう言ったのか?」
「いや……」

 どう伝えるべきかと少し考え込む。美鈴も離婚を望んでいたが、彼女からの要望はそれだけではなかった。もっと中途半端で曖昧なものを望んできた。

 未だに理解できないでいるその提案をどう伝えればわかってもらえるだろうか。自分の戸惑いも含めて伝わるよう言葉を選んでいたら、せっかちな手嶋が割り込んできた。

「じゃあ、早く美鈴ちゃんのところに戻れよ。戻ってもっとしっかり話せ。本当に離婚になるぞ」
「いや、離婚自体は美鈴も納得している」
「え……」
「でも、すぐの離婚じゃない。離婚を前提に付き合ってほしいと言われたんだ」

 結局、美鈴から言われた言葉そのままを口にした。どんなふうに言い換えたとしても、意図を理解できていない自分が上手く言い表せるわけがないと思い直したのだ。
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