離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
 作っておいた食事を用意し、美鈴はソファーに座る。千博が食事を終えるまでは勉強でもして時間を潰そう。そう考えていた美鈴だが、千博にそれを止められてしまう。

「もう遅いから美鈴は先に休んでいていい」
「え、でも……」

 まだ食器の後片づけが必要だとちらりとテーブルの上に目をやれば、千博は美鈴の意図を察したのか先回りして答える。

「片づけはしておく」

 その返しに美鈴は小さな勘繰りを入れる。美鈴と同じ空間にいたくなくて、ここから追い出そうとしているのではないか。そんな思考がよぎる。

 昔の二人であったならば、美鈴を休ませるための優しい心遣いだと受け取れただろう。きっと素直に『ありがとう』と言うことができた。

 けれど、愛のない今はどうしても疑ってしまう。裏がないかと探ってしまう。

 本当は塾の同僚に対してそうしているように、千博に対してももっと素直に受け応えができればいいのに。そう思ってはみても、今の美鈴にはそれが難しい。

「そう……じゃあ、おやすみ」
「おやすみ」

 結局、そんな軽いやりとりだけをして寝室へと移った。


 新たに出会った人たちとの仲は深まっていくのに、千博との仲だけがどんどん薄れていくようで、美鈴は二人の終わりが近づいていくのを感じられずにはいられなかった。
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