離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
「……大体は古いものを観に行っていたかな」
「古いもの?」
「うん、主には文化財を観に行っていたよ。歴史的建造物を見学しに行ったり、美術館や博物館にも足を運んでいた。あとは骨董市があればよく行っていたかな」

 また一つ千博のことを知って喜びを覚える。

 千博にそんな趣味があるとは知らなかった。もっと早く知りたかった。

 そう思うのと同時に、一つだけ思い当たることがあるのに気づく。

「あっ、あのときも?」

 美鈴はそう言いながら、千博と付き合うきっかけになったあの日のことを思い出す。

「あのとき……? あー、カレーのおすすめを訊かれたときのか」

 千博もあの出来事を思い出したのか、とても楽しそうな笑顔を見せる。その表情に美鈴は目を奪われた。この三ヶ月、ずっと影を潜めていた千博の笑みなど目にしたら、胸が勝手に高鳴ってしまう。

 美鈴は思わずそのまま千博の顔を見つめそうになるが、はっと我に返り、慌てて言葉を返す。

「あ、うん……そう、あのとき」
「そうだな。あの日も骨董市が目的であの場を訪れていたかな」
「そう……そうだったんだ。全然知らなかった。そういうものが好きだって」

 それなりの時間を共に過ごしてきたはずなのに本当に知らなかった。そのことに少しばかりショックを受ける。

 美鈴が知っている彼は偽りの姿だったとはいえ、どこかで彼のことをわかっているつもりでいた。知っている気になっていた。

 でも、美鈴の知らない千博のいろんな姿がきっとまだまだあるのだろう。できればそれを、これからの三ヶ月で知っていきたい。
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