はるけき きみに  ー 彼方より -
「さすがは石川さんの妹だわ。でもあの舟頭に気付かれたら危なかったわよ。それにあなたは前夜、わざと菱屋の手先に捕まったのよね?」

「はい。兄と田中さんの捜査が行き詰っていると思ったので」
「それで、捕まってどうするつもりだったの」
「抜け荷の黒幕を突き止められるかもしれないと」
「無謀だわ、あなた一人でどうなるものでもないでしょう」

 互いをじっと見た。
「それを言うなら紫音さまも。一人でここまで追いかけて来るなんて」

 目の奥が緩む。
「お互いさまだわね」
「はい。役人の身内の(さが)というのか、つい・・」

「でも問題はこれからどうするかよ。肝心なのは石川さん達に見つけてもらうことでしょう。それでここにいる娘さんを助けて、その次は菱屋の悪事を暴くのよ」
「それにはどうすれば?」

「どうすればって・・」
 目を泳がせてから、
「それが分かれば苦労はしないわ」
「・・はあ」

 そのときだった。
「お前は誰だっ!」

 あの白髪の舟頭が立っていた。
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