はるけき きみに  ー 彼方より -
「あ、あの」
 娘が声をかけてきた、ひどく戸惑っているのがわかる。

 それに答えようと頭の中で言語を組み立てた。
「・・ここは、どこですか」

「まあっ、言葉が、わかるのですか」
 心底驚いていた。

 それでもなお、
「私のいうことが、わかりますか?」
「ああ、たぶんだいじょうぶ」
「よかった。言葉が通じなかったらどうしようかと思って」

「ここは? どこですか」
 再び聞いた。

「下乃浜、というところです」
「しもの・・はま?」
「ええ、堺の港の南の方角になります」

 まだ何かを聞きたそうな男に、
「堺は外国船が立ち寄ると聞いたことがあるわ。だから、もしかしてあなたも堺に行くところだったのかしら」

「・・さかい」
 とつぶやいてから、
「そうだ、さかい、そこへ行く途中だった、それが嵐にあって」
 言うなり上半身を起こそうとする。

「あ、起きてはだめよ。あちこちに傷があるんだから」

 止めようとした。が、その前に男の顔がゆがんだ、激痛が走ったのだ。
 
 観念してまた横になる。
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