はるけき きみに  ー 彼方より -
 つぎつぎ説明するそれは紫音には難しいものだった。
 同時にマシューはこんなことに携わっているのだと思った。

 そんな彼が途中から苦笑いを浮かべている。
 それを見て、
「え? もしかして、今までにそんな経験をしたことがあるの」

「ああ。大陸の港で日本の商人と会ったことがあってね、そのときこのやり取りで失敗したんだ。結局は誤解が解けたけど、あやうく商談を失敗させるところだったよ。あれは案外大きな取り引きだったから、ちょっと危なかったな」

「大きな取引って?」
「船倉に積み込まれた穀物、そのすべてだよ」
 と茶目っ気たっぷりに笑っている。

 船倉の穀物すべてといったら相当な量だろう、それをこんなふうにあけっぴろげに話すだなんて。

「・・なんだか、違うのね」
 ふと口をついて出た。

「え?」
「あ、いえ、なんでもないわ」

「違うって、なにが?」
 言いかけた先を、首をかしげて促してくる。

「その、日本の・・男性とは違うと思ったものだから」
「・・・・」
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