きみと私の恋のみち〜想いを伝えたい〜
~羽音愛sideに戻ります‼~
チャイムが鳴り響く中、月音くんが桜の木の幹の向こう側から走り出したのを見て私はびっくりした。もしかして今のつぶやき、聞こえていた?!慌てて口元をおさえた。絶対聞こえてるよね、だって間に幹しかないもん。「あー、もう‼」どうしてよりによって月音くんなの!私はその気づきから逃れるように走った。
教室に入ると、もう授業は始まっていた。あー・・・ため息が心の中でこぼれる。
「すみません、おくれました・・・・・」月音くんはぎりぎりで入ったみたい。私はもうアウトだよ・・・
「次からは気を付けるようにね、衣川さん。」先生のそんな声に紛れて香波さんの声が聞こえた。
「ねえ、ついさっき亜希様、戻ってきたよね?もしかして直前までいちゃついていたりして。だとしたら相当ひどいよね。ていうか亜希様、トイレ行くって言っていたよね?それで出て行ったのに中庭にいたってさっき先生に言っていたよね?おかしくない?」すると花道さんが答えた。「あれじゃない?ほら、出てきたところを無理やり連れて行ったとか。なんか平気な顔してるけどやりそうじゃん。」「うーわ、やば。」また、勝手なことを・・・
そんなつもりなんてなかったのに私は気づいたら香波さんたちに向かって大声を出していた。
「やめてよ!」みんなが驚いて私を唖然とした目で見つめる。それでもかまわず私はつづけた。「そうやって勝手に決めつけて信頼度下げて・・・・ほんっとありえない!いくらなんでもひどすぎるよね?」私は制服の紺色のプリーツスカートを握った。
すると先生も言葉を発した。「香波さん、花道さん、人の悪口はやめなさい。先生にも聞こえているわ、今の会話。どうやら恋愛でトラブルになっているようだけれど誰が誰といちゃついているのだとかそういうふうにおしゃべりするのはあなたたちの勝手だけれど、それから悪口に発展させるのはちょっとね・・・」するとその言葉に納得がいかないのか香波さんは反抗的な目つきで先生を見つめた。
「どうしてそんなこと、言えるんですか?先生は知らないかもしれないですけれど衣川さんは月音くんといちゃついていたんです。放課後に先生の目を盗んでは。そして裏であたしたちの悪口を好き勝手言って月音くん奪って・・・・とにかく悪いんですよお」
「衣川さんが?」「はい、そうです!本当なんです!私は見たんです。衣川さん、平気な顔していつも裏側で人の悪口言ってるんです!ふつうにめっちゃ傷つきますよ!」やめてよ、先生にまで広げないで!確かに、私は人の悪口を、心の中で言ったことはある。でも・・・・・そんな言い方・・・・!もう終わりだとぎゅっと目をつぶったその時。
「おい、やめろよ香波。嘘つくなよ。」ひんやりとした声が耳に響いた。な、なに?しゃべったのは普段面倒ごとにかかわらないと言っていたはずの月音くんだった。
「俺だってわかってる。お前が嘘ついてること。俺は衣川とあの日同じところにいた。違う?でも俺は忘れたペンケースを取って衣川とちょっとだけしゃべっただけだ。それはあくまでクラスメートとしての会話だ。勝手に決めつけんなよ。」
月音くんはきれいなふたえまぶたの目でキッと香波さんと花道さんを見つめた。さすがにその迫力に驚いたのか、香波さんはしどろもどろになりつつ答える。
「ま、まさか、私が嘘つくわけないじゃん。亜希様、本気で疑ってんの?そんなこと言ったら私だってあの日見てたんだから!」「なんだよ、見てたってなんだよ!それにさ、会話を聞いてたのか?遠くから見ていただけじゃないか?で、なんで見てるんだよ!お前部活入ってるだろ!普通なら俺がペンケース取ったときって部活始まってるよな?」
「そ、それは・・・・」言外に亜希様が誰かといちゃついていたら嫌だからという意思を感じる。それは私だけじゃなかったみたい。
「お前・・・!勝手に決めつけて悪口言うなよ。最低だな。」冷たい一言。それはたぶん、香波さんの心に鋭いナイフで切り付けられたような痛みが走ったのだと思う。うわっと泣き出してしまった。「な、なんで、私ばっかり・・・」
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