きみと私の恋のみち〜想いを伝えたい〜
6.恋の味
綾香たちと遊んだ翌日、日曜日。いつもなら塾の模擬テストや何かしらの用事があるから暇っていうことはないけれど今日はなにも用事がなかった。
朝起きて、朝ご飯を食べて、着替えて、それから自室でスマホを見ている。一度スマホから目を離す。一人で出かけようかな。ふっと、そんな考えが頭をよぎった。
いつもは綾香たちやお母さんと出かけるけれど一人で出かけるのもアリかもしれない。一人でショッピング。未知。でもなんとなく楽しそうだ。今日はお出かけにピッタリの快晴ってニュースでやっていたし。
私は早速、小さなリボンのついたバッグにスマホと財布を入れる。
玄関から出ようとしたとき、リビングからお母さんが顔を覗かせた。
「あら?羽音愛、出かけるの?綾香ちゃんたちも一緒?」
「えっと・・・今日は、一人で出かけようと思って。」お母さんがどんな反応をするのか顔色を窺いつつそう口にすると、微笑をふくんだ声でうなずいた。
「あら、いいじゃない。行ってらっしゃい。」
と、快くOKしてくれた。
わくわくしながらスニーカーを履いて外に出た。きつい日差しも、わくわく感が幾分和らげてくれたような気がした。

隣駅のショッピングパークに私は来ていた。
多くの家族連れでにぎわうなか、私は、いろいろな店をぐるぐると回っていた。
『恋の味と行方が占える?!今人気のこんぺいとう!』かわいらしいフォントで書かれた紙が添えてある、こんぺいとうを見つけた。
ガラスの容器の中に、赤系の色のこんぺいとうが詰まっていた。ところどころ水色や黒色、黄色のこんぺいとうも入っている。
桜色のリボンが結ばれていて、ハートのデコレーションシールがちりばちりばめられている。初恋に気づいたばかりの私にはとても魅力的な商品に思えた。
財布の中身と金額を確認しつつ考える。
これ、買ってみようかな?綾香たちと食べたら楽しそうだし、何より興味ある!
決心がついた私はすぐさまお金を払いに、商品をもってレジへ向かおうとした。
レジには短い列ができていたので、一番後ろに並ぶ。
列の前の女の子の後ろ姿にどこか見覚えがあった。
「あ、綾香?」そおっと声をかけると前に並んでいた女の子はすぐに振り向いた。その顔は紛れもなく綾香!
「羽音愛!奇遇だね。こんなところで会うなんて!」
綾香は私の両手をぎゅっとつかみながら笑顔で言った。
「あれ?羽音愛、それはもしや・・・・・」
「え?」綾香が私の持つこんぺいとうに目を向けた。
「それ!初恋の味が占えるこんぺいとうじゃん!・・・・月音くんとのあれやこれやを占うんでしょ?」当ててやったとばかりにいたずらっぽい笑みを浮かべながら綾香が言った。
「う・・・まあ、そうだよ・・・」なんだか恥ずかしくて違う話題を振った。
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