きみと私の恋のみち〜想いを伝えたい〜
後藤先輩はバレーボール部でエース。中三の先輩。綾香は写真部なのにどうしてバレーボール部にかかわることになったのかまで細かく話し込んでくれたから疲れただろうけどそういう綾香の表情は楽し気で。いつか私も、綾香みたいに楽しく恋愛論を語れるリア充な女子中学生になれるんだろうか。私はすぐに言葉に表さず、考え込んでしまうところがあるなあと思って心の中で苦笑した。
いっそのこと・・・・
<宮野台北。宮野台北。扉からホームまでは間がございます。お降りの際は足元にお気を付けください。>
考え事をしていたら、あっという間に家の最寄り駅。危ない。乗り過ごすところだった。
慌てながら電車を降りた。
駅から家までは急で長い坂道がある。坂道に差し掛かる手前で、持っていたスマホで時間を確認していたら、手が滑った。
あっ。そう思った時には遅くて、スマホは手から滑り落ちて地面に直撃しようとしていた。フィルムが割れちゃう・・・・!変えたばかりなのに・・・・
無言で落ちるスマホを見つめていたら、すっと横から手が伸びてきて、地面に直撃するギリギリで私のスマホをつかんだ。あっ。本日二度目のあっ、が心の中で生まれた。
「スマホ、落としそうだったよ。拾えてよかった。」どこか聞き覚えのあるひんやりとした声だな、とぼんやり思いながら、視線を拾ってくれた人へ向け、お礼を言った。
「あ、ありがとうご・・・」でも私の声は最後まで形にならなかった。
だって・・・・まあ、予想をつくだろうある『人物』が拾ってくれたから。それは、綾香でも、綾香の妹の美綾ちゃんでも友香でも美桜でも、香波さんでもなく・・・・
「つっ、月音くんっ?!」ひっくり返った声が出た。
「あ、衣川。よお。」
アワアワしている私と違って、月音くんは落ち着いた様子。
「き、奇遇だね!こんなところで会うなんて。あっ、あのっ、拾ってくれてありがとう。助かった!」なるべく慌てているのをくみ取られないように明るく言うと、月音くんはよかった、と笑った。
「どういたしまして。拾えてよかった。・・・・ん?顔、赤いけど大丈夫?熱でもある?」
そういわれるけれど答えられなかった。
どうして月音くんって恋愛小説にでてくるような余計ドキドキを加速させる『顔赤いけど大丈夫?』って言うんだろうっ?モテ男子だから?見かけによらずこの人、天然なの?!
考えを巡らせていたら気が遠くなりそうだ。やっぱりどきっと
私は手を振って笑顔で月音くんと別れた。
それを、誰かが見ていることに、私は気が付かなかった・・・・
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