きみと私の恋のみち〜想いを伝えたい〜
ああ、それが綾香の初恋か。後藤先輩への思いは混じりけもなく、ずっと貫き続けたってことね。納得がいき、私は笑いを浮かべて綾香に話した。
「ふふっ、それって綾香が後藤先輩に一途な甘い恋をしてたってことだよ。」
「ええ、そうなの?確かにね~。」綾香は笑って返した。そして、ふと真顔になって口を開いた。
「ねえ、羽音愛。月音くんって、モテモテだよね?」
「うん。」当たり前のことを聞かれてちょっぴりびっくりしながらもこくん、と私はうなずく。
「月音くんによって来る女子たちは香波さんみたいな問題児もいるけど、積極的な優等生よりの人たちもいるわけじゃん?」
確かに、月音くんによって来るのは香波さんたちみたいな問題児だけではない。
(普段、香波さんたちの存在感が強いだけだから見えないけど・・・・)
「ここで不思議に思わない?羽音愛みたいにわりと真面目な子たちで、ビジュもまあいいのに、月音くんは、誰とも付き合わない・・・・・」
「それは・・・・月音くんがただ単に性格に好意好意を持てないからだよね?」
そういうとぷっ、と綾香がふきだした。
「もう、にぶいなあ。もしかしたら羽音愛が好きだから誰とも付き合わないかもよ、って話だよ。」「なっ・・・・?」かあっと顔が赤らむのを自覚しながら言う。
「まあ、これはあくまでも私の予想だけど。私の勘がそう言っているものね。」
自信満々って感じで言ってくる綾香。「でも、月音くんと付き合うまではいかなくても仲良しくらいにはなっておきたいでしょ?」「うん。距離は・・・縮めたい、かも?」
こくりとうなずくと綾香は私の両手を自分の両手でがしっと、つかんだ。最後の、「かも?」は聞こえなかったみたい。
「私に任せて。心理テストとか、恋愛小説、マンガとか占いとかじゃなくて実体験からくるオトす術を教えてあげるから。」綾香の話に聞き入っているうち、すっかりお昼を回っていた。「あはは、話しすぎちゃったね。おなか、すいちゃった。」楽しかったとばかりに微笑む綾香。恋愛論はどこまでも深くて、終わりがないように見えた。
「でも、まだまだ終わらないんだからね。羽音愛、聞きたい?」
「さ、さすがに無理だよお。話過ぎ!」
「ごめん。夢中で話し込んじゃったね。」
私は綾香と別れてから、帰り道、綾香に教えてもらった恋愛術を頭の中で繰り返した。
「綾香って、本当にすごいな。」後藤先輩のことが好きな女子は他にもたくさんいるにも関わらず、二人の関係を保っているなんて。綾香に改めて拍手を送りたくなる。
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