今日も星々は夜空を煌めく

Episode.1 ~ salty dog~


深夜1時。お店が閉まり、ギラギラと輝くネオンを尻目に夜の街を歩く。普通の人間だったらこの時間に就寝しているはずなのに、ここの住民たちは今が昼のように盛り上がっている。コンカフェやガルバの客引きの女、キャバクラ勧誘の黒服、ぼったくり居酒屋の声掛け、手当たり次第声を掛けるホスト、夜の駆け引きをしている男女、私と同じ居場所がない子供たち、この世界を見て見ぬフリする警察。多分普通の世界で生きていけない人間たちがこの汚い世界に辿り着くのだろう。私もその1人だもの。だからと言って、客引きをしたり、男にお金を使ったり、夜の駆け引きをしようとは思わない。ただボーッと日常の嫌なことを忘れることが出来るからこの世界にいる。それだけだ。

もちろん今まで危険な光景を見たこともある。女が男に強引にホテルに連れて行かれるところや何が原因なのか分からないがリンチをしているところ、女が男に金を掛けて道端で泣いてるところ。少なくとも私は関係がなく、助けても無駄なだけ。

私はよく行くバーへ向かう。私のお店の店長と仲が良いバーで太陽が出てくるまでそこで匿ってもらうことが多い。

カラン...

「美月ちゃーん!いらっしゃい〜!」

ここのオーナーのマリさんは私をよくしてくれる。第二の家のような気持ちになれる。私は端のカウンターに座り、着ていたアウターを椅子にかける。

「みづだー!いらっしゃいませ!」

奥からこのお店で働いているユウがおしぼりとコースター、灰皿を持って私の先に持ってきてくれた。ユウは私の4歳年上のお兄さん的存在で信頼が厚い。キャラメルみたいなふんわりとした長めのパーマに少し高い身長の割には華奢な身体、カジュアルな雰囲気を持つ彼はこのお店では人気の店員だ。

「みづがこの店に来るってことは愚痴りに来たな!このユウお兄ちゃんが相談所になってやろうではないか!最初何飲む!」

少しお酒を飲んだのかユウはテンションが高い。

「ソルティドックかな。」
「お、珍しい。ウォッカベースかー、みづも大人になっちまって!」
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