青ひげ危機一発
 新妻は夫の青ひげ公に言った。
「行方不明になった今までの奥方たちの剥製を見ましたよ。あなたの仕業ですね」
 青ひげ公はショックに震えた。
「お前、あの地下室へ入ったのか!」
 ゆっくり頷いて新妻は答えた。
「この城は私の城でもあるのですから、全部を見回るのが当然です。殿が不在の間に、地下の奥深くに入り、七つの美女の剥製を見つけました」
 青ひげ公は激怒した。
「秘密を知ったからには、お前も殺してやる」
 その顔に歪な笑みが浮かぶ。
「俺は愛した女を殺して剥製にするのが好きなのだ。そろそろお前も剥製にしてやろうかと思っていたところだ。さあ、覚悟しろ」
 新妻は悠然と答えた。
「私が行方不明になったら、この城を捜索するよう、家族に手紙を出しました。私が夫に殺されるかも、とも書き添えました」
「何だと」
 青ひげ公は恐怖に震えた。新妻の実家は有力な貴族で国王とも近い。これまでの犯罪が暴かれたら、破滅である。
「ですが、私が生きている限り、何も起こりませんよ。ご安心下さい」
 新妻は柔らかな微笑みを浮かべた。だが、その裏には、口止め料を求める卑しい笑いが隠されている。青ひげ公は自分の不運を呪った。
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