守護王の最愛~運命を壊す禁断の恋は、祝福の淡雪を降らせる~
 身軽な体を利用して素早くその手を交わすと、すぐさまもう一度走り出す。
 裏道から大通りまで出た時に振り返ると、もう「それ」はすぐそばまで来ていた。

 裸足の私は傷だらけで、血も滲んでいる。
 けれど、不思議と痛みは感じなかった。

「──っ!!」

 もう息もまともにできないほどの体は、足がもつれて地面に転んでしまう。
 迫りくる恐怖で足もがくがくと震える。
 「それ」が私に再び手を伸ばした。

 立て立て立て立てっ!!!!!!!
 心の中で自分を奮い立たせる。
 地面についた両手で必死に体を引きずって、少しでも前へ逃げる。

 助けて……!
 もう声も出なくなった私は、自分の最期を覚悟して目を閉じた。


 ──しかし、その時は訪れなかった。

「ぐぎゃああああああああああーーーーーー!!」

 耳をつんざく様な「それ」の叫び声が聞こえて、私はゆっくりと目を開いた。
 私を「それ」から守るように立つ彼は、美しく長い黒髪を靡かせている。
 その奥で先程まで私を追いかけていたものが、散り散りになって消えていった……。

「立てるか」

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