The previous night of the world revolution5～R.D.～

箱庭帝国に観光に来た人々は、口々にこう言った。

「どんなものかと思って来てみたら、案外面白いじゃないか」と。

他の国にはない珍しい特産物。秘境であるが故の美しい景観。独特の味付けをされた素朴な箱庭帝国料理も、観光客の目を惹いた。

長年鎖国状態であったが故に、人々は箱庭帝国のことをよく知らない。

だからそれを逆手に取って、「物珍しさ」をアピールして、観光客を募る。

憲兵局の支配もなく、今は国内も落ち着き、皆が心配するほど治安も悪くない。

観光地は綺麗に整備されているし、宿泊施設も次々と増えている。

憲兵局支配時代のように、街に浮浪者がさまよっていることもない。

元々が貧しい国であったから、物価も安く、旅費もそれほど高くない。

全くあの童貞お坊ちゃんが。上手いこと考えたものだ。

箱庭帝国に観光に行った者は口々に、「箱庭帝国って、結構良いみたいだよ」と広めていった。

『青薔薇委員会』の必死のアピールと、こういった観光客の口コミによって、近年、どんどん箱庭帝国への旅行者は増えてきている。

各国の旅行会社は、争うように次々と箱庭帝国ツアーを企画し、箱庭帝国側も、積極的にそれを受け入れた。

お陰で、ルティス帝国内の旅行客は箱庭帝国に吸い取られ、ルティス帝国の観光業は商売上がったり状態である。

全く、あいつも憎いことしてくれるじゃないか。