The previous night of the world revolution5~R.D.~
ルチカ・ブランシェットの説教は続いた。

いちいち哲学ぶった語り草で、いまいち分かりづらい上に。

訳の分からん宗教論で、思わず舌打ちしたくなった。

「人は皆、神を愛するように、地上にいる全ての人を愛さなくてはなりません」

こんな胡散臭い台詞とかな。

「この世界にいる限り、傷つけられて良い人などいないのです。全ての人は皆平等で、幸福で、信仰に溢れた豊かな生活をする権利があります」

…。

「よって、貧しさで飢える人や、虐げられて苦しめられる人がいてはならないのです。そんな人々を産み出す国家を、決して、許してはいけないのです」

…。

「私のもとには、多くの苦しむ民衆が、神の救いを求めて集まってきます。きっと皆さんも、心に何らかの傷を負ってここにいらっしゃるのでしょう。その傷は、神の愛と人の愛が癒してくれます」

…。

「皆さん、神を愛しましょう。人を愛しましょう。そうすることで、あなたの傷ついた心は癒されるのです」

観客席の人々は、うんうんと頷きながら聞いていた。

中には、感激の涙を流す者までいた。

すると。

今まで優しげに語りかけていたルチカ・ブランシェットが、いきなり顔を曇らせた。

「それなのに、国家は、容赦なく敬虔なる神の信徒達を苦しめます」

…あ?

「皆さんが苦しむことになった原因、それは何ですか?この国の制度、王政という悪しき慣習。貴族制度。そして、図々しくも政府を牛耳る帝国騎士団です」

…今度は、帝国騎士団をなじるつもりか。

自分の不幸の原因は、全て帝国騎士団にあると。

「私達の進むべき道は、神が示してくださる尊いもの。それなのに女王や貴族達、帝国騎士団は、私達から幸福に生きる権利を奪い取り、私達の富や財産を吸い取り、私達を虐げておきながら、その上であぐらをかいて贅沢に暮らしています」

…。

「彼らは皆さんのように、毎日必死に、懸命に今日を生きる努力をしているのに、王侯貴族達は何をしていますか?何もしていません。皆さんが今の生活をする為に、どんなに努力して生きてきたでしょう。それに対して、王侯貴族達は何をしてきましたか?何もしていません。彼らはただ、その家に生まれたというだけの理由で、生まれたときから何の苦労もせず、安楽を貪っているのです」

…。

「これを不平等と言わず、何と言いましょう。貴族達は、まるで悪魔のようなもの。ルティス帝国の悪の象徴です。彼らは生まれたときから何の苦労もせず、飢えもせず、贅沢の限りを尽くし、努力せずとも将来を約束され、私達が得るべき幸せを奪い取って生きているのです」

「…ルレイア、大丈夫か」

話題が話題だけに、心配になったのだろう。

ルルシーが、そっと声をかけてきた。

「…別に平気ですよ」

知らない人が聞けば、誰だってそう思うだろうからね。

そうだろう。あんたの言う通りなんだろうよ。
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