The previous night of the world revolution5~R.D.~
オルタンスが実にいつも通りで、ホッと一息ついたところで。

本題に戻ろう。

「…で、貴族の連中が亡命を始めてるって?」

「あぁ。『天の光教』は王侯貴族を目の敵にしてるからな」

貴族様達も、最初の頃は、インチキ宗教団体ごときに何が出来る、と鼻で笑ってたんだがな。

自分の家の周りを、意味ありげにうろうろしている『天の光教』の信徒達を見て、もしかしたらヤバいかもしれないと思い始めたらしい。

もし本当に、奴らがルティス帝国の覇権を握るようなことがあれば。

貴族制度はただちに廃止され、彼らは一般市民の立場に落とされる。

それだけで済めば良いが、最悪、旧時代の象徴として処刑されかねないのだ。

そりゃ海外に亡命しようと考えるのも無理はない。

俺だって帝国騎士団の一員じゃなければ、今頃逃げ出すことを考えていたかもしれないな。

自分の命が大切だからな。

「…最早、一刻の猶予もない」

アストラエアが言った。

「今すぐにでも、『天の光教』を反政府組織とみなして、強制捜査に踏み切るべきだ」

相変わらずアストラエアは、過激派である。

逆らう奴らは潰せと。

そして、そんなアストラエアと同意見なのが、ユリギウスだ。

「同意見だ。奴らは明らかに帝国騎士団と、ベルガモット王家を侮辱し、無辜の帝国民の生活を脅かしている。これ以上信者が増える前に…」

一方。

そんな過激派な先輩隊長達に異を唱えるのが、ルレイアの後釜、ルーシッドだ。

「お待ちください。そんなことをすれば、『天の光教』信者達を刺激するだけです。もし教祖に何かしたら、彼らは制御不能の暴徒になるでしょう」

「だからと言って、奴らをこれ以上調子に乗らせる訳には行かないだろう」

「幸い、『天の光教』はまだ武装蜂起していません。彼らが武器を手にする前に、『天の光教』と平和的交渉をするべきです。国民感情を刺激しないように…」

「軟弱な。怪しげな宗教団体に屈して、何千年と続いたルティス王政を汚すようなことになれば、我々は歴史の笑い者だ!」

「それは…」

…早速、紛糾しつつある。
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