The previous night of the world revolution5~R.D.~
会見は、記者達の質問も含めて、一時間程度で終わった。

幹部組で揃ってテレビを見つめていた俺達は、画面が会見場からスタジオに戻った後、初めて口を開いた。

「…終わりましたね」

「あぁ…」

各々、感想はあるだろうが…。

「…?…??」

アリューシャは、素直に首を傾げていた。

色んな法律用語や、小難しい法的解釈の説明があった為、アリューシャには何が何だか、さっぱり分からなかったらしい。

シュノさんとルルシーも、ちょっと怪しげ。

分かったような分からなかったような…みたいな顔だ。

それも仕方ない。

弁護士ってのは、ああいう小難しい言い回しをするものなんだよ。

俺達六人の中で、先程の会見を全て理解したのは、俺とアイズ、そしてルリシヤの三人だけだろう。

そのアイズが、俺に尋ねた。

「…どう見る?ルレイア」

…まぁ、俺に聞くことになるよな。

元帝国騎士団四番隊隊長という肩書きは、消そうとして消えるものではない。

「そうですね…。この会見自体は、台本通りって感じでしたね」

「えっ、これ台本あんの?」

アリューシャびっくり。

「そりゃあありますよ。句読点一つ、抑揚の一つにちゃんと台本用意してます。その通り読み上げただけですね」

「…やっぱり、君もそう思うんだね」

「仕方ないと言えば仕方ないですよ。小さな失言一つで、帝国騎士団の首が飛びかねないですし…」

記者達の質問から、その返答に至るまで、全てあらかじめ台本を用意していたはずだ。

何なら、先日ルチカ・ブランシェットと会談してからすぐに、こうなることを見越して、準備させていたのだろう。

小賢しい奴らだと思うが、自分がもしまだ帝国騎士団四番隊隊長だったらと考えると、あながち馬鹿には出来ない。

小癪だと思うだろう。卑怯だと思うだろう。

でも、これが政治なのだ。

「台本を考えたのは誰?」

「細かい台詞を決めたのは弁護団でしょう。でも、大筋を作ったのはオルタンス達ですね」

「…それ以外ないよね」

ですよねー。

「さすがに専門家が作った台本だけあって、上手いこと作ってると思いますよ。筋は通ってるし、法的解釈に無理もない。素人なら、『成程』と納得させられる内容です」

「確かに…。アリューシャも、何言ってんのか分かんなかったけど、でもなんか、思わず頷いちゃった」

だろ?

小難しい言葉を並べられると、人間そうなっちゃうんだよ。

「ごめんなさい、ルレイア…。私、よく分からなかったけど…」

シュノさんが、おずおずと手を上げた。

「つまり、デモ行為そのものは罪じゃないけど、『天の光教』のデモは危険性を孕んでるから、逮捕することにした、ってこと…?」

シュノさん、なんて良い解釈。

「その通りです。この一時間を簡潔にまとめると、そういうことになります」

ダラダラと小難しい言葉ばかりを並べてはいたが。

結局、言いたいのはその一行。

『天の光教』って、なんか危なそうなことしてるから、逮捕することにしました。

それだけ。

一時間かけて、それだけを言おうとしてる。

10秒あれば充分言い切れる台詞なのに、何でわざわざ一時間もかけるかなぁ。

政治家って大変だな。

俺はリタイアしておいて良かった。
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