The previous night of the world revolution5~R.D.~
シェルドニアと聞いて、アリューシャは思い出したようだ。

「あぁ、そうだそれそれ!シェルドニア!何だ、『シェ』まで合ってんじゃん」

「ふざけんなアリューシャ。アイズがヒントあげてただろうが」

ルルシー、そんな怒らないであげて。

「あんなところに、もう二度と行く必要はないだろ」

「…俺も、そう思ってたんですけどね」

そうは行かなくなっちゃったんだよ。

現時点で、ルティス帝国よりシェルドニア王国の方が「金持ち」なのは明白。

それに俺はシェルドニア王国の女王、縦ロールなんちゃってゆるふわお嬢様(笑)こと、アシミムに、色々と貸しがある。

その貸しを返してもらうという口実のもと、金をせびり取ることが可能だ。

勿論、アシミムは俺に借りがあるから逆らいはしないだろうし。

アシミムが独断でルティス帝国への援助を決めたとしても、あの国の国民は、王の意思に反するということを知らない。

他国幇助は良い行いだ、と口を揃えてアシミムを賛美することだろう。

全く、こういうときは『白亜の塔』が羨ましいな。

国が荒れるということがないのだから。

ま、そんな国には住みたくないのだが。

良い思い出もないし…。

だが、金づるにはこの上なくあつらえ向きだ。

「シェルドニアからの援助が入れば、ルティス帝国経済は一気に潤いを得ます。そうすれば、『天の光教』の勢いは止められる」

「…」

ルルシーだって、分かっているだろう。

ルティス帝国を窮地を救う鍵。

それは、シェルドニア王国にある。

そしてそのツテを使うには、アシミムに貸しのある俺が行かなければならない。

他でもない、この俺が。

「…俺は、二度とお前をあんなところに行かせたくない」

苦しげな顔で訴えるルルシー。

…ありがとう、ルルシー。

その気持ちだけで充分嬉しいよ。

「心配しないでください。俺は大丈夫ですから」

過去の傷は、ちゃんと過去の傷として落とし前をつけている。

「でも…。ならせめて、俺が…」

「ルルシー、シェルドニア語怪しいじゃないですか」

「舐めるなよ。俺だってあの滞在中に、かなり覚えたんだからな」

それはそうだけど。

「アシミムに貸しがあるのは俺なんですから、俺が行かなきゃ話になりません」

「…」

それでも渋るルルシー。

心配性、ここに極まれり。

それに、シュノさんも。

「大丈夫なの?ルレイア…。また…その、洗脳の後遺症みたいなのが…。だったら、ルレイアの代わりに私が行くわ」

「シェルドニア語なら、私も話せる。『青薔薇連合会』代表として、私が話をつけに行くよ」

「アイ公が行くなら、アリューシャも行く!何かあったら、アリューシャが何処からでも、何でも格好良く撃ち抜いてやるから!」

「心配するな、ルルシー先輩。俺が行こう。俺はアシミムの屋敷を二度脱出した男だ。シェルドニア語も話せる」

…あらあら。

ルルシーだけかと思ったら、皆して志願してきちゃった。

「だからぁ、アシミムに貸しがあるのは俺なんだから…」

「そんなの関係ないわ!ルレイアがまた帰ってこなくなったらと思うと…私…夜も眠れないんだもの!」

「そうだよ。私達だって大変だったんだからね?あのとき」

「そーだそーだ!アリューシャだってな、昼も眠れないくらい心配してたんだぞ!」

物凄く反発された。

そうか…。アリューシャが昼に寝られないくらい心配させてしまったとは…。それは重症だ。

「…えぇっと、皆さん」

これは、真面目に説得しなければならないようだ。
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