The previous night of the world revolution5~R.D.~
「…分かりましたわ」

アシミムは、しばし考えて、そして頷いた。

「その貿易協定に調印しますわ」

…まぁ、そうするしかないだろうな。

しかし。

「主よ…!良いのですか、こんな不利な協定…」

ルシードは、アシミムに声をあげたが。

「呑むしかありませんわ。我々は、『青薔薇連合会』に借りがある。逆らえる立場ではありませんもの」

「ですが…!」

「だからぁ、あなたは黙っててくれませんかね」

余計な口出しすんなよ、ガキが。

「ラトヴィを救ってくれた恩もありますもの。その恩を返すくらいのことは、しなくてはなりませんわ」

「…殊勝な心掛けじゃないですか」

そういう精神は、あの『ホワイト・ドリーム号』を造る前に発揮して欲しかったな。

だったらせめて、少しでも借りを返してもらおうか。

「それに、これを機に、ルティス帝国との国交を親密にするのも悪くありませんわ」

…だろうな。

ルティス帝国には、敵に回してはいけない人間がいるということを知ったのだから。

出来るだけ、尻尾は振っておきたいはずだ。

自国の為にも。

「無論、永遠にこのままって訳じゃありませんよ。俺も鬼じゃないですからね。ルティス帝国経済が安定したら、いずれ関税も平等なものに戻しましょう」

その頃には、俺の手は離れてるだろうがな。

そもそもルティス帝国に帰った時点で、この貿易協定については帝国騎士団に引き渡す。

武器や薬の密輸入ならともかく、表の貿易は、元々マフィアの領分ではない。

それはお国の方が勝手にやってくれ。

俺はあくまで、代理として来ただけだ。

脅迫の為にな。

「…分かりましたわ。承諾します」

「ふふ…。それはどうも」

わざわざシェルドニア王国にまで、足を運んできた甲斐があった。

これで、『天の光教』は終わりだ。
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