The previous night of the world revolution5~R.D.~
国内の景気が回復するにつれて、信者の数はどんどん減っていった。

新規の信者が減っただけではない。

一度は神に忠誠を誓った者達が、次々と『天の光教』を脱退していったのである。

最初の頃、私は脱退者を引き留めはしなかった。

彼らを引き留めなくても、それ以上に新規の信者の方が多かったから。

でも、今や新しい信者はいない。

誰も、私の言葉に耳を貸さない。

講演会を開いても、誰も聞きに来ない。

デモを行っても、メディアは以前のように私達の味方をしてくれない。

おかしい。

こんなことになるのは、おかしい。

皆分かってくれたじゃないか。認めてくれたじゃないか。

『天の光教』は。神の教えは、正しいのだと。

だから、あれほど広まったんじゃないのか?

皆神の愛を知ったから、『天の光教』に入信してくれたんじゃないのか?

それなのに、何故やめていってしまうのだ。

折角神の道に入ったのに。

あんなに熱心に教典を読み、王政を批判し、デモに参加してくれたのに。

ほんの少し、懐が豊かになってきただけで。

皆手のひらを返したように、次々と離れていった。

神の心から。

私の心から。

どうして?

どうして、こんなことになる?

私は、何も間違ったことは言っていない。

だから、あれだけの信者が集まったんじゃないのか?

折角神の道に入って、救われて、平等になって。

いざ、これから本格的に信仰を広めていかなければならないのに。

何で、皆離れていくの?

そんな、もう興味を失ってしまったかのように。

もう必要なくなってしまったかのように。

使い終わった、ちり紙を捨てるように。

これ以上信者を失う訳にはいかない。『天の光教』は正しいのだから、人々に忘れられてはならない。

私達が忘れられたら、最早誰がこの国を正しく導けるのか。

だから私は、脱退しようとする信者を引き留めた。

捕らえて、神に替わり、断罪した。

一度は神を受け入れておきながら、その神の道から逸れようとする、憐れな信者。

彼らは、神の手によって裁かれなければならない。

痛みを持ってその罪を償わせ、そして正しき道に戻さなくてはならないのだ。

駄々をこねる子供を、叩いて言うことを聞かせるように。

私だって、こんな方法は取りたくなかった。

でも、これが神を讃える為に必要な痛みなら、受け入れなければならない。

そうだ。全てはこの国の人々に、神の愛を教える為。

その為なら。

私は、悪魔とでも手を組む。
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