The previous night of the world revolution5~R.D.~
もう疑う余地もなく、完全にお見合いだな。これは。
何を答えるべきなのか。
本当のことを言うべきか、それとも彼女に合わせて、猫を被っておくか。
「そうですね…読書ですかね」
やんわり包んでおいた。
嘘はついてない。
読書と言っても、読んでるのは大抵エロ本だが。
「まぁ、読書ですか。素敵な趣味ですわ」
エロ本だけどね。
「私も、本は読みますのよ。特に好きなのは『ルティス帝国英雄伝』ですの」
定番過ぎて、面白味も糞もない。
子供に好きな絵本を尋ねて、桃太郎と答えるのと同じくらい面白味がない。
「あぁ…。定番ですよね」
「あの主人公、とても魅力的ですわよね。国の為に立ち上がり、困難に立ち向かい…。いかなるときでも希望を失わず、何度傷ついても諦めず、光に向かって進む…。本当に、英雄と呼ぶに相応しい方ですわ」
「…」
「…?どうなさいました?」
「…それって、本当に正しいと思います?」
「え?」
『ルティス帝国英雄伝』。
この国で、この本を知らない者はいないだろうってくらい、有名な本だ。
僕も、勿論読んだことがある。
ルティス語だけでなく、色んな国の言語で読んだ。
しかし、何度読んでも僕は。
あの物語を、綺麗事としか思えないのだ。
僕がひねくれているのだろうか?
「傷ついて転んで、立ち上がる者だけが尊い訳じゃない。光の中で生きている者だけに価値がある訳じゃない。傷ついて立ち上がれずに、絶望して、闇の中でもがいて、そこに居場所を見つける…。そんな生き方をしては、いけませんか?」
「…それは…」
「僕、あの本好きじゃないんです。『正しい生き方』を押し付けられてるみたいで…」
もっと、自由に生きて良いじゃないか。
闇の中で生きてたって良いじゃないか。
光の方に向かうことだけが、正しい人間の生き方ではない。
そりゃあ英雄は確かに尊いけども。
英雄じゃなくたって、誇り高い生き方をしている者はいくらでもいる。
闇と光は紙一重。
同じ人間でも、何か一つ違えば、どちらに落ちてもおかしくはない。
この英雄は、ただ偶然光の方に落ちただけ。
そしてきっと、ほんの一つの偶然で、闇に落ちる者もいる。
それだけの話だ。
「…殿下は、とても思慮深いお方なんですね。そんな考え方、私はしたことがありませんでした」
「…そうですか」
生まれたときから綺麗なものばかり見ていたら、そんなことは考えもしないのだろう。
何を答えるべきなのか。
本当のことを言うべきか、それとも彼女に合わせて、猫を被っておくか。
「そうですね…読書ですかね」
やんわり包んでおいた。
嘘はついてない。
読書と言っても、読んでるのは大抵エロ本だが。
「まぁ、読書ですか。素敵な趣味ですわ」
エロ本だけどね。
「私も、本は読みますのよ。特に好きなのは『ルティス帝国英雄伝』ですの」
定番過ぎて、面白味も糞もない。
子供に好きな絵本を尋ねて、桃太郎と答えるのと同じくらい面白味がない。
「あぁ…。定番ですよね」
「あの主人公、とても魅力的ですわよね。国の為に立ち上がり、困難に立ち向かい…。いかなるときでも希望を失わず、何度傷ついても諦めず、光に向かって進む…。本当に、英雄と呼ぶに相応しい方ですわ」
「…」
「…?どうなさいました?」
「…それって、本当に正しいと思います?」
「え?」
『ルティス帝国英雄伝』。
この国で、この本を知らない者はいないだろうってくらい、有名な本だ。
僕も、勿論読んだことがある。
ルティス語だけでなく、色んな国の言語で読んだ。
しかし、何度読んでも僕は。
あの物語を、綺麗事としか思えないのだ。
僕がひねくれているのだろうか?
「傷ついて転んで、立ち上がる者だけが尊い訳じゃない。光の中で生きている者だけに価値がある訳じゃない。傷ついて立ち上がれずに、絶望して、闇の中でもがいて、そこに居場所を見つける…。そんな生き方をしては、いけませんか?」
「…それは…」
「僕、あの本好きじゃないんです。『正しい生き方』を押し付けられてるみたいで…」
もっと、自由に生きて良いじゃないか。
闇の中で生きてたって良いじゃないか。
光の方に向かうことだけが、正しい人間の生き方ではない。
そりゃあ英雄は確かに尊いけども。
英雄じゃなくたって、誇り高い生き方をしている者はいくらでもいる。
闇と光は紙一重。
同じ人間でも、何か一つ違えば、どちらに落ちてもおかしくはない。
この英雄は、ただ偶然光の方に落ちただけ。
そしてきっと、ほんの一つの偶然で、闇に落ちる者もいる。
それだけの話だ。
「…殿下は、とても思慮深いお方なんですね。そんな考え方、私はしたことがありませんでした」
「…そうですか」
生まれたときから綺麗なものばかり見ていたら、そんなことは考えもしないのだろう。