The previous night of the world revolution5~R.D.~
俺は、瞬時に考えを巡らせた。

アイズがいないなら、考えるのは俺の仕事だ。

「…ルルシー。確かにアシュトーリアさんは今、地方都市で別企業と取引中でしたよね」

「あぁ。こんな都合の悪いときに…」

アシュトーリアさんの指示は仰げない。

こちらで判断しなければ。

「分かりました。ルルシー、シュノさんとルリシヤを呼んできてください」

「分かった」

ルルシーは何も聞かず、すぐに部屋を出ていった。

一方、アリューシャは。

「アリューシャが助けに行く!アリューシャがアイ公助けに行く!」

涙目で、何度もそう連呼していた。

完全に、冷静さを欠いている。

その気持ちは分かる。拉致されたのがルルシーだったら、俺だって今頃…。

「大丈夫ですよ、アリューシャ。俺達のアイズが、そう簡単にくたばるもんですか。我々で助けに行きましょう。大丈夫です」

アイズレンシアは、誰より思慮深く、冷静な男だ。

どのような状況に陥っても、常に最適な行動を取るだろう。

この音声ファイルを送ってきたのが、何よりの証拠。

少しでも向こうの状況を、俺達に伝えようとしてくれているのだ。

そうこうしていると、すぐにルルシーが戻ってきた。

シュノさんと、ルリシヤを連れて。

「アイズが拉致されたって、本当なの!?」

シュノさんの顔は、酷く青ざめていた。

「はい。K企業との取引に行ったきり、連絡がつかず…。緊急用のメッセージファイルが届いていて、何者かに拉致されたと思われる音声が送られてきました」

「そんな…!アイズが…!」

「今すぐ。今すぐ助けに行こう!アリューシャが行く!」

「私も行くわ!」

アリューシャもシュノさんも、今にも飛び出さんばかり。

俺だってそうしたい。でも…。

「探しに行こうにも、携帯が壊されていて、GPSで居場所を探知出来ないんです」

奴らがアイズを捕らえるなり、携帯をぶっ壊したのは、そういう理由だ。

俺達がアイズの居場所を探れないように、携帯を壊した。

これでは、アイズの居場所が分からない。

居場所が分からないのでは、すぐさま突撃、という訳にはいかない。

「K企業との取引に使ってるのは、確か帝都のホテルですよね」

「あぁ、そのはずだ」

「なら、ホテルとその周辺の監視カメラを漁って…」

「そんなことしてたんじゃ遅過ぎる!」

アリューシャが叫んだ。

「気持ちは分かります。でも、そうしなきゃアイズの居場所が…」

と、俺が言いかけたそのとき。
< 43 / 627 >

この作品をシェア

pagetop