The previous night of the world revolution5~R.D.~
…何故、俺はこんなところにいるのか。

しかも目の前には、雲の上の存在にも等しい、『裏幹部』のルーチェス・アンブローシアさん。

頭の中、パンクしそうなんだが。

「…で、ルヴィアさん」

「は、はい」

優雅な所作で紅茶を一口啜ったルーチェスさんは、早速最初の質問をぶつけてきた。

「ずばり、夫婦円満の秘訣は何だと思いますか?」

…実に、ずばりな質問だ。

夫婦円満の秘訣か…。何だろうな…。

俺の場合、円満に保とうと努力してるってことはなくて…。

ただ嫁が…フューニャが可愛くて、一緒にいたいから一緒にいたって感じだから…。

「…難しい質問です?」

「えぇっと…。そうですね…」

敢えて答えるとしたら。

「家庭内の…笑顔を保つことでしょうか」

「…ほう…」

なかなか興味深い、みたいな顔のルーチェスさん。

…俺、もっと気の利いた返事は思い付かなかったのか?

その方法を尋ねてるんだろうに。

「笑顔の絶えない家庭ってのは良いですね。僕もそういうのとは縁遠かったので、憧れます」

…分かる。

「それでルヴィアさんは、どんなときに笑顔になるんですか?」

「それは…。嫁と話してるときとか…。嫁と一緒にいるときに」

「傍にいられるだけで、幸せってことですね」

うん。

俺、フューニャの傍にいられるだけで幸せ。

他にはもう何も要らないってくらい、幸せ。

「じゃあ、あなたじゃなくて奥さんは?奥さんはどんなときに、笑顔になるんですか?奥さんの笑顔を保つ為に、あなたは具体的にどんなことを?」

…。

…?

…何その質問。

難しっ。

フューニャがどんなときに笑顔か…?

思い出す。可愛いフューニャの笑顔を。

思い出しただけでほっこりするが、今はほっこりしている場合ではない。

俺はどんなときに、その笑顔を見てるんだ?

あぁ畜生、可愛い笑顔だけが記憶に残って、その前後に何があったのか、全然覚えてない!

「え、え、えっと…。ケーキ、そう…。ケーキ買って帰ったり、食事に誘ったり…」

「ふむ…」

「あとは…新しい服を買ってあげたりしたときとか…」

「…つまり、物で釣ってるってことですか?」

頭の中に、けたたましい音で雷が鳴り響いた。
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