The previous night of the world revolution5~R.D.~
とはいえ、俺の仕事が邪魔されることに変わりはない。

「はいアリューシャ、あーん」

「あーん」

おい、そこの親馬鹿親子。

ケーキくらい、自分で食わせろ。

「美味しい?アリューシャ」

「うぃ」

そうやって甘やかすから、アリューシャがまた甘ったれになるのだ。

しかし、こちらはまだマシ。

「ん~ルルシー。なんて素敵な匂い…。はぁ、フェロモンが出そう…」

俺の背中にくっついて、ベタベタしてるこいつ。

マジで気持ち悪いから、本当誰か何とかしてくれないかな。

フェロモンを出すな、フェロモンを。

だが、こちらもまだマシなのだ。

だって。

「ルリシヤ先輩って、梅干しの漬け方知ってます?」

「あぁ、知ってるぞ。教えようか?」

「お願いします」

「分かった。じゃあ、今晩ルルシー先輩の家に来てくれ。材料は俺が用意しよう」

見てみろ。不法侵入の計画を立ててる。

自分の家に招待しろよ。何でわざわざ俺の家なんだ。

しかも本人の前で相談するな。

「おい、そこの不法侵入二人組」

「え?誰が不法侵入してるんだ?けしからん奴だ。俺が成敗しよう」

「お前だよ、お前」

お前が成敗されてしまえ。

「俺がどうかしたのか、ルルシー先輩」

「何の相談をしてるんだ。さっきから」

「後輩が、梅干しの漬け方を教えて欲しいって言うから、教えようと思ってな」

ルリシヤが多才なのは知ってる。

年越し蕎麦を、蕎麦粉から作るくらいだからな。

梅干しの漬け方くらい知ってても、驚きはしないよ。

で、ルーチェス。

元王子のお前が、何故梅干しの漬け方を知りたがる?

「教えるのは勝手だが、うちでやるな。よそでやれ」

「大丈夫だ。ちゃんとルルシー先輩の分も漬けるから」

そういう話をしているのではない。

俺は、別に梅干しが食べたい訳じゃないんだよ。

「人の家に勝手に入ってくるなと、何回言えば分かるんだ?」

「勝手に入ってないぞ。ちゃんと毎回、お邪魔しますと…」

あーはいはい分かりました。

この野郎共め。俺も毎回、やられっぱなしになってると思ったら大間違いだぞ。

よし、良いだろう。

「俺、今晩寝ない。一晩中起きててやる。そしてお前らがやって来たら、現行犯で逮捕する」

いかに不法侵入のプロと言えど、家主の俺が起きて、台所に陣取っていれば。

勝手なことは出来まい。

こいつらのお陰で明日寝不足になるのは辛いが、不可抗力だ。

「何っ、それは想定外だ」

「ルルシーさんって、大人気ないんですね」

黙れルーチェス。

悪かったな。どうせ俺は大人気ない大人だよ。

見たか。俺だって、やるときはやるんだぞ。

絶対に、こいつらの侵入を阻止してやる。

勝手に、うちの台所を梅臭くされてたまるか。
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