The previous night of the world revolution5~R.D.~
「…ルリシヤ、あなたの兄…どうします?」

「…」

ルリシヤの兄は、ルリシヤを政略結婚させ、某企業令嬢が持ってくる持参金で、借金を返済させ。

クレマティス家を立て直そうとしていた。

でも、それが叶わないとなれば。

ルリシヤの兄は、そしてクレマティス家は…。

「…あなた次第です」

買収した企業を通じて、クレマティス家に資金援助をさせても良い。

ルリシヤの代わりに、俺がハーレムに入れた社長令嬢を、ルリシヤの兄と結婚させても良い。

求めていた持参金は手に入るだろう。

しかし。

兄のことも、クレマティス家のこともどうでも良いなら。

なるようになれば良い、知ったことではない…そう思うのなら。

このまま放っておけば良い。

遠からず、クレマティス家はルティス帝国貴族社会から、名前を消されるだろう。

それだけのことだ。

もう、ルリシヤには関係ない。

俺が同じ立場だったら、ウィスタリア家などどうでも良い。

滅びるなら、勝手に滅びれば良い。

むしろ、薄汚い貴族の血が淘汰されて、ルティス帝国が清浄化されたと喜ぶところだ。

でも、ルリシヤは。

「…資金援助させてやってもらえないか。兄に」

「…良いんですか?」

「…兄がああなってしまったのは、俺のせいだからな」

…ルリシヤのせいじゃないと思うけどな。

兄弟が仲違いしたのは、ルリシヤの才能故だが。

本当に悪いのは、二人を差別した、死んだ二人の父親だ。

だが、死者は裁けない。

故に…。

「…分かりました。では、そうしましょう」

ルリシヤの気持ちは、ルリシヤでなければ分からない。

彼がそうしたいのなら、そうすれば良い。

むしろ、ルリシヤが少し羨ましい。

それが例え情けでも同情でも、まだ自分の生まれた家と家族に、情が残っているのだから。

俺は、もうとっくに置き去りにしてきてしまった。

「…あなたは、それで良いと思います」

無情に全てを切り捨てられないルリシヤ。

だからこそ弱く、そして強いのだ。
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