The previous night of the world revolution5~R.D.~
「しかもここの病院の人、毎食アリューシャがちゃんと食べたかどうか、チェックしに来るんだぜ?刑務所じゃん」

まぁ、向こうもそれが職務だからね。

患者がちゃんと食べてるかどうか、チェックしないといけない。

「大体アリューシャは病気じゃねぇもん。骨折だもん。なら好きなもの食っても良くね!?」

確かに。

食事制限が必要で入院してる訳じゃないもんね。

「我が儘だな、アリューシャ…。これを機に食生活を改めろ」

「やだね!アリューシャはおやつを食う!帰ったらまずポテチ食うからな!見てろよ!」

はいはい。

そんな元気があるなら大丈夫そうだ。

「それで…アイズ」

「うん?」

「それ、何の本読んでるんです?」

アイズが片手で開いていた本は、見覚えのない代物だった。

まぁ、俺も最近はあまり本は読まないから、最近の本には詳しくないのだが。

「あぁ、これ?こんな本だよ」

アイズは本の表紙が見えるように、本を引っくり返してくれた。

タイトルは、『天の光教~全ての人に愛と希望を~』。

…え。何これ。

「…見るからにインチキそうな宗教本ですね…」

愛だの希望だの夢だの光だの。

そんなもん、幼稚園で卒業しろよ。

「アイズはいつから宗教家になったんです?」

「まさか。私の趣味って訳じゃないよ。ただ、部下が暇潰しに、何冊か本を持ってきてくれたんだ」

じゃあ、その部下の趣味?

個人的には、あまり良い趣味とは思えないな。

「今ね、流行ってるんだって。これ」

「え…?その本が?」

「うん。本屋さんに入ってすぐの入り口に、山積みにされてたって。だから買ってきてくれたみたい」

あぁ、部下の趣味って訳じゃないのか。

ただ、本屋で山積みに陳列されてるから、今これが流行ってるんだろうと思って、あくまで好意で買ってきたと。

そうだとしても、もうちょっと選べよ。

「よくある自己啓発本的な感じですか?恨むな、憎むな、妬むな、自分と他者を受け入れろ、みたいな」

ああいう本って、一杯売ってるし、何故かベストセラーになってることもあるけどさ。

何なの?あれ。

俺にとっては、自己満足と偽善と綺麗事の垂れ流しにしか見えないんだけど?

アホか。この世に希望も光も夢もねぇよ。

夢なんか見たきゃ、寝て見やがれ。

「まぁまぁ、そう嫌わないでよ。確かにちょっと綺麗事臭くて、私もあまりピンと来ないんだけど…」

やっぱり。

「でも、これが今のベストセラーだって言うんだから、皆これを読んでるんだろうね」

「ふーん…」

皆暇なのかな?

俺だったら、こんな本読むくらいなら、鏡の中の自分を相手にボクシングするよ。

それくらい嫌い。

俺には、一生縁のない本だな。
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