エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
 金曜日、先生は当直明けで眠っているはずなので、そっと帰宅しご飯を作っていると起きてこられた。
 「優茉おかえり。ご飯ありがとう、お昼は食べ損ねたからお腹減ったな」と寝起きのほわんとした感じで喋る彼はやっぱり可愛い。院内の鋭い目つきをした先生とはまるで別人だ...。

 「ところで優茉、明日俺も休みになったから、どこか出掛けないか?」
 「...お疲れじゃないですか?貴重な休日ですし、休まれた方が...」
 「外に出た方が気分転換になるし一緒に出かけたい。どこか行きたい所はない?」
 ...行きたい所?話の意図が読めず、うーんと考えているフリをしてみる。
 「どこでもいいよ?海までドライブでも、大きな本屋さんでも水族館でも遊園地でも。俺は優茉が行きたい所に行きたい」
 水族館?遊園地?本当にそんな所でも...?本屋さんも行きたいけれど...前から一度行ってみたかった場所を思い出した。
 「本当に、どこでもいいんですか...?」
 「うん。足りないけれど、いつもご飯やお弁当を作ってもらっているお礼だと思ってさ」
 「いえ、それは私が好きでやっている事ですし、そもそも食費は先生のカードで払わせてもらっていますし...。でも、前から一度行ってみたかった場所があるんです。大好きな小説の舞台になっている所で...」
 「じゃあそこにしよう。明日楽しみにしてる」

 その後、私がお風呂から出るとソファでタブレットを見ている彼は目をぎゅっと瞑ったり瞬きを繰り返している。
 そういえば...目の疲れを癒すグッズがあったのを思い出し、部屋からホットアイマスクを取ってきてレンジで温める。
 「先生、五分だけ上を向いて目を閉じてもらえますか?」
 「ん?」と不思議そうな顔をしている彼の手元からタブレットを抜いてテーブルに置き、目を閉じるように促す。
 「どうですか?少し目の筋肉が解れる感じがしませんか?」
 「確かに。じわじわ温まっていく感じが気持ちいいよ、ありがとう」
 「五分くらいは温かいのでそうしてて下さいね」
 「ははっ、寝ちゃいそうだな」
 「ベッドでした方がよかったですね。先生が寝ちゃったらさすがに運べないので」
 「じゃあ、寝てしまわないように何か話そう」

 明日の予定を話しているとあっという間に五分経ち、アイマスクを外してからもう一つのリラックスグッズを取り出す。
 「先生、次は手を見せてください」
 「手?これでいい?」とまた小首をかしげながらも素直に両手を出してくれる。
 「では右手から失礼します」
 先生の手を取ってペンの様なツボ押しグッズで優しくマッサージしていく。少しずつ力を入れてツボを押しながら、ここはどうかな?と先生の表情を確かめると時々痛そうに顔を顰めている。
 「っ、そこ痛い...」
 「ここは目と腸のツボです。やはり目がお疲れですね。こっちはどうですか?」
 あちこち確認しながらツボを押して、最後に掌全体を揉みほぐしてマッサージはおしまい。すると先生は両手をグーパーして「すごい、スッキリした...」と少し驚いてからにこっと笑ってくれた。
 「よかったです。きっと緊張状態が続いて、筋肉が強張っていたのかもしれませんね」
 「そうなのかな。あまり気にした事なかったけど、指が動かしやすくなった気がする」
 「先生の手はとっても大切な手ですから。たくさんの患者さんを救ってきた神の手です」
 「ははっ、ありがとう。じゃあ、優茉も手を出して?」
 私も...?お返しにやってくれるのかな?と軽い気持ちで右手を出すと、その手をぎゅっと握られぐっと引き寄せられた。
 「あ、あの...先生?」
 「知ってる?ハグってストレス緩和に効果があるんだよ。免疫機能の向上や睡眠を促す作用もある。だからもう少しだけ」そう言いながらぎゅっと腕に力が入ってさらに強く抱きしめられ、すっぽりと先生の腕の中に収まってしまった。
 こ、これは...?先生なりのお返し...?
 でも、今の私には睡眠を促すどころか心臓が痛いほど強く打ちつけていて全く落ち着かない。
 「どう?効果ありそう?」
 「えっと... どう、でしょう...?」
 耳まで真っ赤になっている自信があり恥ずかしくて俯くと、先生の両手が伸びてきて頬に添えられ上を向かされた。
 「ふっ、顔が赤い。耳も」スッと耳が先生の指で優しく撫でられて、身体がビクッとしてしまう。耐えられず先生の両手を外しまた下を向くと、今度は右手を握って少し引っ張られそれにつられて立ち上がる。
 「優茉、寝よう?」とそのまま手を引かれてベッドに入ると「明日が楽しみだ。おやすみ」そう言って私の前髪にちゅっと一度キスを落としてから灯りを消した。
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