エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
 その後、片付けやお風呂の用意にお洗濯までしてくれ、私はまだ少し熱があるからと先にベッドに寝かされてしまった。
 大人しく本を読んでいると、しばらくして柊哉さんもベッドに入りライトを消すと抱き寄せてくれた。
 「優茉、二回」
 「......へ?」
 何の事か分からず彼を見上げると「今日、二回"先生"って言った」と片方の口角を上げてニヤッと少し意地悪な笑顔でこちらを見ている。
 「あっ...い、言いました?二回も...?」
 「うん、ちゃんと数えていたから。二回してくれるんだよな?キス」
 「で、でも私熱があったので移してしまったら大変ですし...。きょ、今日はやめておいた方が...」
 「大丈夫、おそらく優茉の熱は過労による一過性のものだから。まぁ、どこにしてもいいけど?」
 こ、これは逃げられそうにない...。じっとこちらを見ているので、覚悟を決める事にした。
 「じゃあ、目、閉じてて下さい...」
 少しだけ身体を起こして、柊哉さんの額と頬にちゅっちゅっと二回キスをした。薄暗いけど、真っ赤になっているであろう顔を見られたくなくて、すぐに胸に顔を埋めた。
 「ふっ、ありがとう。じゃあ、お返し」
 そう言って私の顎に指を添えてくっと顔を上げられて、ちゅっちゅっと唇に二回キスされ熱がぶり返してしまうかと思った。

 そして柊哉さんの診断通り風邪ではなく一過性の発熱だったようで、月曜にはすっかり下がっていた。
 それでも、今朝は一段と冷え込みが強くまだ病み上がりだし冷たい空気は気管支に良くないと説得され、彼の車に乗せてもらい一緒に出勤してきた。
 あの後、心配をかけてしまった天宮さんにだけは事の顛末を話したけれど、他の人に一緒に出勤している姿を見られてはまずいと思い私は少し後から中に入った。
 柊哉さんは「気にしなくていいのに」と言うけれど、また麗奈さんの時の様に彼を狙っている方から敵意を向けられるのはもう勘弁して欲しいから。

 相変わらず彼は忙しく、平日はあまり話をする時間もないけれど、時間が合えば一緒に食事をしてハグをして眠る毎日はとても幸せ。
 今日は結城先生の外来を予約してあるので、仕事終わりに診察室を訪ねるとなぜか白衣姿の柊哉さんがベッドに腰掛けていた。
 「え⁈ どうして...」
 「優茉、前に話したと思うけど結城は大学時代からの友人なんだ。だから俺たちの事を話してある」
 「そ、そうでしたか。でも、どうして先生がここに...?」
 「俺は今日当直で帰れないから優茉の顔が見たかったんだ。今の状態も知りたかったしね」
 「はいはい。一緒に来ていいとは言ったけど、惚気ていいとは言ってないぞ」と結城先生がキッと睨むけれど、彼は肩をすくめて素知らぬ顔をしていて二人の仲の良さが伺えた。
 「じゃあまた二週間後に予約入れておくから、忘れずにきてね」
 薬をもらい診察室を出ると、柊哉さんに軽く背中を押されて足早にどこかへ向かった。
< 52 / 109 >

この作品をシェア

pagetop