エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
カスミソウ <幸福>
 その二日後、土曜の朝ピピっという電子音で目が覚めると、柊哉さんは体温計を手にしていた。
 「起こしてごめん、身体辛くない?だいぶ咳もしていたし吸入した方がいい」
 「熱、ありますか...?」
 「うん、8℃越えてる。自覚症状はある?痛い所は?」
 「えっと...少し頭が痛いです...」そう言うと、何処からかペンライトや聴診器を取り出し「ちょっと診せて」と私がぼんやりしている間にテキパキと診察されていた。
 「少し喘鳴聞こえるけど、思ったより酷くないね。今日はゆっくり休んでて。お粥作っておくから少しでも食べてちゃんと薬も飲むんだよ?何かあったらすぐ連絡するって約束して?」
 そう言って頭を撫でてくれた後「おやすみ」と額にキスを落とすとお仕事に行ってしまった。

 しばらくして目が覚めると、カーテンの隙間からは日差しが差し込んでいる。キッチンへ行くと小鍋の中に卵粥が入っていて、少しずつ口に入れると優しい味が身体に沁みていく。今朝も一緒にいたのに、一人で食べていると寂しくなり、何時に帰ってくるのかな?早く会いたい...そんな事ばかり考えていた。
 まさかこんなにも誰かを好きになれるなんて...自分でも少し驚いている。こんなに本気で誰かを好きだと愛おしいと心から溢れ出したのは生まれて初めてだった。
 もちろん院長が認めてくれるかは分からないし、釣り合っていない事も分かっている。でもその度に麻美に言われた言葉を思い出す。
 幸せになる努力をしないと...。もっともっと先生に好きになってもらえたら、ずっと一緒にいてくれるのかな...?その為には、何をしたらいいんだろう...。

 考え事をしているうちに眠っていたようで、再び電子音で目が覚めぼんやりと目を開けると、柊哉さんの顔が目の前にあった。
 「おかえりなさい」
 「ただいま、起こしてごめん。熱はだいぶ下がったけど、まだしんどそうだな。咳は大丈夫?頭痛は?」
 頭を撫でてくれるけど、まだ病院モードの先生に問診されているようでちょっと寂しくて、何も答えずに抱きついた。
 「ふっ、優茉?どうしたの?」
 ぎゅっと抱きしめ返してくれて、お家モードの柔らかい表情で笑ってくれた。
 「もう元気になりました」
 「本当?じゃあご飯作ったから食べよう?」
 「夜ご飯まで用意して頂いて...先生はお仕事でお疲れなのにすみません」
 「気にしなくていいよ。簡単なものしか作れないけど、他の家事も出来る時は俺がやるから無理しないで」
 「ありがとうございます」
 「そういえば、この前俺が渡した予定表まだ持ってる?」
 「あ、はい。先生のお休みが書かれてあるものですよね?」
 「その休みのどこかで優茉のご家族に挨拶に行きたいんだけど、どうかな?あと、優茉のマンションもそのままにしておくわけにいかないだろう?このまま、ここに引っ越して来ないか?」
 嬉しい...でも、本当にいいのかな...?やっぱり院長に反対されてって事もありえるし...
 そんな事を考えてしまい、すぐに返事ができなかった私をみて彼は苦笑いをする。
 「ごめん、急ぎすぎた?もちろん優茉のペースに合わせるけど、俺は将来の事も一緒に考えたいと思ってる」
 「いえ、嬉しいです。でも...本当にいいんですか?まだ院長に挨拶もしていませんし、やっぱり反対され...」
 「優茉は?優茉は俺との将来は考えられない?」と私が言い切る前に、少し寂しそうな顔でそう問われた。
 「...私は、もちろん柊哉さんと同じ気持ちです。これからもずっとそばに居たいです」
 「じゃあ院長は関係ない。俺たちが同じ気持ちならそうしよう。たとえ反対されても、俺は優茉を手放す気はないから」
 「柊哉さん...」
 「俺は優茉に本当の婚約者になって欲しいって言ったよな?その気持ちは変わらないから。マンションのこと、挨拶のことも考えてみて」
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