わたしを「殺した」のは、鬼でした
「いいじゃなぁい。帯はこっちの白地のものにしましょう。ほら、まっすぐ立ってちょうだい」

 牡丹様が鮮やかな手つきでわたしに振袖を着せていく。
 振袖なんてはじめて袖を通した。
 戸惑いつつも、どこか浮足立つような気持ちもあって、もじもじしている間に着付けが終わる。
 自分で締めるのとは違い、複雑な形に帯が結われて、そのまま髪の毛も整えられた。

 いつも紐で結わっていただけのわたしの髪が銀杏返しに結われ、大ぶりの簪が挿される。
 簪は白い椿の花の飾りがついていた。
 お化粧もしましょうと言われて、おしろいが塗られ、目じりと口元には紅が刷かれる。

「似合うじゃないのぉ」

 牡丹様はとても満足そうな顔で手を叩いて笑ったあと、わたしにそこにいるように告げて部屋から出て行ってしまった。
 取り残されたわたしは、振り袖姿で仕事に戻るわけにもいかず、言いつけ通りおとなしく待っているしかない。

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