結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?

 それからの三日間、史花は優成のプロポーズの返事に迷いに迷っていた。
 ふとした仕事の合間や休憩中、通勤や帰宅の電車の中でも。あまりにも考え込んで、眉間に寄った皺が一生消えないのではないかと心配になるほど。トイレに行って鏡に映る顔に自分で驚くたびに、慌てて指で眉間を伸ばしている。

夜勤が明けて帰宅し、空のお弁当箱を洗いながらその話がやはり頭に浮かんだ。

 彼との結婚を悩む理由はふたつある。
ひとつ目は優成との釣り合い。女性の誰もが憧れるエリートパイロットの結婚相手が、地味で冴えない自分で本当にいいのか。並ぶ姿を想像しても全然しっくりこない。

ふたつ目は、交際もしないで結婚してうまくいくのか。恋愛経験がないに等しいため、恋人をすっ飛ばしていきなり夫婦になる自信がない。

彼とは業務上の接点しかなく、プライベートでしゃべったのは喜乃に紹介されたときだけ。そんな相手と交際もしないまま結婚生活を送っていけるのか。
 そのふたつを悩みはじめると止まらなくなる。

(でも……)

 母が先日ふと漏らした言葉が、史花はずっと引っ掛かっていた。

『お父さんを早く亡くして、ひとり親で昔から寂しい思いばかりさせてきたから、いい人が現れても、結婚して幸せな家庭を築くイメージができないのかな……』
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