結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?

寂しそうに呟いた母の顔が、史花の頭から離れない。
きっと今でもそう憂いているだろう。

この機会を逃したら、真面目すぎて男性に敬遠されがちな史花はたぶん結婚できない。恋愛に不向きだから結婚は夢のまた夢だ。

　でも優成の提案に乗れば、母を安心させられる。それは女手ひとつで史花を育ててくれた母へのなによりの親孝行だ。
　不釣り合いなのは自分が一番知っている。優成だってその点はよく考えただろうし、彼が史花でいいと言ってくれているのだから、史花は深く悩む必要はないような気がしてきた。

　彼が言っていたように、お見合いはよく知らない者同士が結婚する手段。交際〇日で結婚するのは珍しくない。
　そう考えると、非現実的だと思っていた彼との結婚が、急に身近なものに感じてくる。


「うん、決めた」


　史花が声に出すと、出勤準備を整えた母、琴子が「なにを決めたの？」と隣から顔を覗き込んできた。


「はい、布巾」
「ありがとう」


　差し出された布巾を受け取り、お弁当箱を拭く。