結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?
「パイロットとディスパッチャーだからねぇ。顔を合わせない日が続くこともあるだろう?」
「そう、ですね」


 顔を合わせても挨拶程度しか言葉を交わしていないとは、木原も想像しないだろう。しみじみと会話をしたのは、結婚前の打合せで会ったときくらいだ。


「でも夫婦はコミュニケーションが大事だからね。結婚したらそれで終わりじゃなく、ふたりともある程度努力は必要だよ」
「努力……」


 ぽつりと呟く。

(でも優成さんは、私との距離を縮める必要はないと思ってるよね……)

 既婚者になりたかっただけだから。妻の存在が欲しかっただけ。
 そう断言され、史花も了承したものの、想像していた結婚生活とあまりにも違いすぎて戸惑っていた。


「はい、これ」


 木原はポケットからお決まりのアメを取り出し、史花に差し出した。


「ありがとうございます」
「さあ、着いたから降りよう」
「はい」


 史花は、電車のドアが開き意気揚々と降りていく木原の背中を追いかけた。
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