ソレが出て来る話を聞かないでください
史也くんは下校途中急になにかに怯えて走り出したかと思うと、路上にうずくまって苦しみだしたと、目撃者は証言している。
しかし史也くんの首にしめられた痕があったことから、警察は事件として捜査を開始しました】

「警察は動いているけれど、犯人はまだ捕まってないみたい」

「だろうな。目撃者には犯人が見えないんだから、史也くんはひとりで苦しみだして死んだように見えていたはずだもんな」

悟志が親指の爪を噛んで考え込んでしまいました。
首をしめられた痕、犯人は捕まっていない。
この2点も、やはり絵里と一致しています。

「さっきリビングでアレが見えた時、首にロープの跡があった。アレは自分と同じように首を絞めて相手を殺すんだろうな」

「うん……」
そう返事をしたところで、急に気分が悪くなってきました。

さっきまでアレから逃げていたから気が張っていたのかもしれません。
史也くんも同じように亡くなっていたショックもあり、吐きそうになりました。

「彩音、大丈夫か?」
「ちょっと、気分が悪いかも」

「今日はもう帰ろう。ソレは1日に1回だけ現れる。それなら今日はもう大丈夫だから」

本当はまだもう少しソレについて調べたかったのですけれど、それも無理そうでした。

私は悟志に体を預けるようにして帰宅したのでした。
< 76 / 127 >

この作品をシェア

pagetop