あなたが運命の番ですか?
「寿々、大丈夫か?顔色悪いぞ?」
さまざまなことをグルグルと考えていると、隣にいるお父さんが心配そうに顔を覗き込んできた。
「あっ……、うん、大丈夫」
私は気丈に振る舞った。
すると、突然部屋の扉が開き、前園社長一家が入ってきた。
「お待たせして申し訳ありません」
部屋に入って来ると同時に、長身でアーモンド形の目と赤いルージュが特徴的な50歳前後のアルファ女性が会釈する。この女性がおそらく前園社長だろう。
前園社長の顔は、10年前の事件の時に記者会見で見ており、確かこんな顔をしていたような気がする。
「いえいえ、とんでもない。社長、本日はわざわざこのような場を設けていただき、ありがとうございます」
私たちは一斉に立ち上がり、お父さんはペコペコと頭を下げながら前園社長に挨拶する。
その横で、私はお見合い相手であろうアルファ男子のことを見ていた。
彼を見た瞬間、私がまず気になったのは、彼の姿勢がかなりの「猫背」であることだ。猫背というよりも、「身体を縮めている」という表現のほうが正しいかもしれない。
私が前園先輩をジッと見つめていると、その視線に気づいた前園社長が彼のほうを見て、「あっ!また」と彼の背中を軽く叩いた。背中を叩かれた前園先輩は、ビクッと身体を震わせると苦い顔をしながら渋々背筋を伸ばす。
前園先輩が背筋を伸ばした瞬間、私は驚いて目を丸くした。
背筋を伸ばした前園先輩は、190cmを優に超えるであろう長身で、私が顔を平行にすると先輩の胸元しか視界に入らないくらいには、私と先輩には身長差がある。
さらに、服の上からでもガッシリとした体型なのが分かり、この間会った水瀬先輩よりも大柄な気がする。
前園先輩は度のきつい眼鏡を掛けており、顔立ちは一重の細いタレ目で鼻が少し大きく、一見真面目で穏やかそうだ。
しかし、そんな顔立ちとは裏腹に、体格はかなり大柄でなかなか威圧感があり、私はそのギャップに驚いてしまった。
私が驚いていると、一瞬前園先輩と目が合った。
しかし、すぐに視線を逸らされる。
心なしか、前園先輩は困ったような顔をしている。
「じゃあ、まずは主役2人の自己紹介からしましょうか」
一同が揃って席に着くと、前園社長がそう仕切った。
前園社長は、右隣の前園先輩に向かって「ほら、挨拶して」と促す。
「前園優一郎です。よろしくお願いします」
前園先輩は、私に向かって深々と頭を下げる。
「は、春川寿々です。よろしくお願いしますっ」
私も慌てて頭を下げる。
私が頭を上げると、また前園先輩と目が合った。しかし、またすぐに逸らされてしまった。
もしかして、私、嫌われてる?
そんな前園先輩の右隣には、40歳前後くらいのオメガ女性が座っている。
チョーカーは外れているけど、低身長と豊満な体型から彼女がオメガであると推測できる。
もしかして、この人――。
「彼女は私の番で、優一郎のもう1人の母親でもある伽耶です」
「前園伽耶です。よろしくお願いします」
伽耶さんは、にこやかに会釈をする。
やっぱりこの人、前園社長の番だったんだ。
じゃあ、前園先輩の両親って、アルファとオメガの女性同士ってこと?
それにしても、前園先輩のご両親、2人とも若いなぁ。
「女性2人で男の子を育てるって大変じゃありませんか?」
お母さんが尋ねる。
「案外小さい頃はそうでもなかったんですけど、最近は全然私たちと口を聞いてくれないし、目も合わせてくれないんですよ」
前園社長が苦笑しながら話すと、前園先輩は恥ずかしそうな顔をしながら社長をチラッと見た。
「あははっ、男の子ってそういうもんですよねぇ。私も、高校時代はお袋と話すの恥ずかしかったもんですよ」
お父さんは陽気に笑う。
さまざまなことをグルグルと考えていると、隣にいるお父さんが心配そうに顔を覗き込んできた。
「あっ……、うん、大丈夫」
私は気丈に振る舞った。
すると、突然部屋の扉が開き、前園社長一家が入ってきた。
「お待たせして申し訳ありません」
部屋に入って来ると同時に、長身でアーモンド形の目と赤いルージュが特徴的な50歳前後のアルファ女性が会釈する。この女性がおそらく前園社長だろう。
前園社長の顔は、10年前の事件の時に記者会見で見ており、確かこんな顔をしていたような気がする。
「いえいえ、とんでもない。社長、本日はわざわざこのような場を設けていただき、ありがとうございます」
私たちは一斉に立ち上がり、お父さんはペコペコと頭を下げながら前園社長に挨拶する。
その横で、私はお見合い相手であろうアルファ男子のことを見ていた。
彼を見た瞬間、私がまず気になったのは、彼の姿勢がかなりの「猫背」であることだ。猫背というよりも、「身体を縮めている」という表現のほうが正しいかもしれない。
私が前園先輩をジッと見つめていると、その視線に気づいた前園社長が彼のほうを見て、「あっ!また」と彼の背中を軽く叩いた。背中を叩かれた前園先輩は、ビクッと身体を震わせると苦い顔をしながら渋々背筋を伸ばす。
前園先輩が背筋を伸ばした瞬間、私は驚いて目を丸くした。
背筋を伸ばした前園先輩は、190cmを優に超えるであろう長身で、私が顔を平行にすると先輩の胸元しか視界に入らないくらいには、私と先輩には身長差がある。
さらに、服の上からでもガッシリとした体型なのが分かり、この間会った水瀬先輩よりも大柄な気がする。
前園先輩は度のきつい眼鏡を掛けており、顔立ちは一重の細いタレ目で鼻が少し大きく、一見真面目で穏やかそうだ。
しかし、そんな顔立ちとは裏腹に、体格はかなり大柄でなかなか威圧感があり、私はそのギャップに驚いてしまった。
私が驚いていると、一瞬前園先輩と目が合った。
しかし、すぐに視線を逸らされる。
心なしか、前園先輩は困ったような顔をしている。
「じゃあ、まずは主役2人の自己紹介からしましょうか」
一同が揃って席に着くと、前園社長がそう仕切った。
前園社長は、右隣の前園先輩に向かって「ほら、挨拶して」と促す。
「前園優一郎です。よろしくお願いします」
前園先輩は、私に向かって深々と頭を下げる。
「は、春川寿々です。よろしくお願いしますっ」
私も慌てて頭を下げる。
私が頭を上げると、また前園先輩と目が合った。しかし、またすぐに逸らされてしまった。
もしかして、私、嫌われてる?
そんな前園先輩の右隣には、40歳前後くらいのオメガ女性が座っている。
チョーカーは外れているけど、低身長と豊満な体型から彼女がオメガであると推測できる。
もしかして、この人――。
「彼女は私の番で、優一郎のもう1人の母親でもある伽耶です」
「前園伽耶です。よろしくお願いします」
伽耶さんは、にこやかに会釈をする。
やっぱりこの人、前園社長の番だったんだ。
じゃあ、前園先輩の両親って、アルファとオメガの女性同士ってこと?
それにしても、前園先輩のご両親、2人とも若いなぁ。
「女性2人で男の子を育てるって大変じゃありませんか?」
お母さんが尋ねる。
「案外小さい頃はそうでもなかったんですけど、最近は全然私たちと口を聞いてくれないし、目も合わせてくれないんですよ」
前園社長が苦笑しながら話すと、前園先輩は恥ずかしそうな顔をしながら社長をチラッと見た。
「あははっ、男の子ってそういうもんですよねぇ。私も、高校時代はお袋と話すの恥ずかしかったもんですよ」
お父さんは陽気に笑う。