あなたが運命の番ですか?

もう遅い

「橘くん、もうちょっと右に寄って」
 僕は東部長の指示に従って移動し、部長と息を合わせてゆっくりとプランターを床に下ろす。
 あれから瞬く間に数日が過ぎ、いよいよ文化祭前日となった。
 
 宝月学園の文化祭は土日の2日に分けて開催され、1日目は体育館で1年生の合唱と吹奏楽部の演奏、演劇部の公演が行われる。2日目は、2年生の教室での出し物や3年生の模擬店、文化部の展示が開かれる。
 今日は金曜日で本来部活は休みだが、2日目の展示の準備のため、特別に活動している。園芸部は、プランターの展示と校内で栽培した野菜の販売を行う予定だ。
 顧問の川田先生にも準備を手伝ってもらい、僕と東部長、春川さんと川田先生のペアでプランターを1つずつ部室まで運んできた。

「よし!プランターの配置はこんな感じで良いかな?あとは部室の飾りつけと、野菜の収穫だけね」
 川田先生はそう言って、長机に折り紙とハサミなどの工作道具を置いた。
 
「それじゃあ、先生は野菜の収穫をしてくるから、みんなは飾りつけを――」
「あっ、先生。僕が収穫してきますよ」
 僕がそう名乗り出ると、川田先生は困惑したように目を丸くさせる。東部長と春川さんも先生と同じように、動揺した様子を見せる。
 
「えぇっ!?そんな……。収穫なら先生に任せて、橘くんは東さんたちと一緒に作業すればいいのに……」
「いや、僕、絵も工作も苦手なんで……」
 僕がそう食い下がると、川田先生は渋々と収穫で使うハサミとカゴを僕に渡した。

「それじゃあ、いってきます」
 部室を出る直前、春川さんと目が合った。
 春川さんは、どこか不安そうな表情で僕を見つめていた。
 そんな春川さんの視線から逃げるように、僕は部室を出る。
< 148 / 195 >

この作品をシェア

pagetop